幕間 艦長就任
概念宇宙歴
『フロンデイア連合』なる呼称が、まだ宇宙に存在していなかった頃。
宇宙移民の船団の中に、とある父母が居た。
「くそ、かわいいな」
オギャア、オギャア。
「ほっぺが赤くて、とても綺麗ね」
オギャア、オギャア。
オギャア、オギャア。
「うるせー!」
……。
残念なことに、その父母はDQNであった。
しかし、子供を溺愛する事、極まりない。
「綺麗な名前が良いよね?」
「綺麗な名前にしようぜ!」
父母はハモった。4度ずらしの方で。
綺麗と綺麗を重ねて、「
しかし、出生登録の際、とある悲劇が発生した。
そもそもの発端は、この父母が、難しい漢字を書けなかった事にあった。
念願の男児に恵まれた喜びで、手が震えたのだろうか?
フリガナの欄に、父親はカタカナで「キレイキレイ」と出生届に記入した……つもりであった。
だが。
「これでは”L”です。”レ”としたいのなら、二重線で消した上で、その右上あたりに書き直してくださいね」
年末の駆け込み対応に忙殺されていた役所の職員は、苛立ちをなんとか抑え込んだような口調で、早口にそう言った。
「ちっ。ほらよ!」
と、DQN父は、出生届を職員につき返す。
おざなりに引いた削除用二重線は、”L”の部分にだけ引かれた挙句、”レ”をその上に書き直すステップを、DQN父は完全に失念してしまったのだ。
登録事務を担当した職員も、忙しさもあって確認を怠り、書類をそのままスキャニング。問題点に気づかないまま、登録処理を進めた。
その結果。
成長したその青年将校が、フロンデイア軍の新造戦艦『ハコビ=タクナイ』の初代艦長に就任するのは、20年以上先の事となった。
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