第2話

 そして放課後がやってきた。

 放課後はいつも通り勉強の時間だ。センター試験、正確に言えば私の行きたい大学の試験まであと二週間といったところで、私は最後の大詰めを迎えていた。


「試験まであと二週間、かあ……」


 言ったところで、何かが変わる訳では無い。

 私がやれるところまでやるしかない、という点について。


「あ、やっぱりここに居た」


 ミキがやってきて、私は目を丸くした。


「どうしてここにミキが?」

「昨日もここに行ったでしょう?」

「あー、まあ、そうだったけれど」

「マキの勉強のお手伝いをしに来たのだけれど、別に悪い話じゃないでしょう?」


 ミキは行きたい大学があるのだろうか。

 そういえばあまり聞いたことがない。


「ミキはどこに行きたいとか、決まってるの?」

「えー、聞きたい?」

「教えてくれるなら、聞きたいけれど」


 でも教えてくれないなら、致し方無い。


「私が行きたい大学は……」


 そして教えてくれた大学は――私と同じ大学だった。

 また目を丸くした私は、ミキに問いかける。


「うっそ。ミキも同じ大学なの?」

「え? マキもなの?」


 きっと、ミキは私の行きたい大学を知っていたのかもしれない。

 だからその反応に驚きを示していたのかもしれない。

 或いは、『演技』?

 演技だったら、ミキはすっかり大女優だ。

 ミキはどういう気持ちで私の話を聞いていたのだろうか。はっきり言ってさっぱり分からない。まあ、私としてはどちらでも良いのだけれど。


「私はあの大学は素晴らしい大学だと思っていたのよね。どこまで良い大学なのかは実際に入ってみないとさっぱり分からないのだけれどね。ま、入ってみてからじゃないと分からないのはどこも同じ話だけれどさ」

「私はあの大学、面白そうだと思うけれど。私としては、あの大学に行くということに意味を持っているからこそ、私はあの大学に行くことに関しては悪くない話だと思うのだけれど」

「まあ、別に悪いところじゃないと思うけれど。……で、どうする?」

「? 何が?」

「マキの勉強のお手伝いをするって話。別に悪い話じゃないでしょう?」

「それは…………そうかもしれないけれど…………」

「なら、良いじゃない」


 ミキは机に腰掛ける。

 悪いことだとは思うけれど、私は何も言わないし何も言えない。

 それを言ったところで、何が変わるという訳でも無い。

 そしてミキは私の顎に手を当てる。

 くい、と上に上げられて。

 私はそれに従うばかりだったけれど。

 結局は何も出来ないだけだったけれど。


「私と一緒に、勉強をしましょう?」


 そうして。

 私はその言葉に従うことしか出来ないのだった。


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