第90手 集団リンチの世界

 嘘だろ? ロリコン師匠が死んだ…!?


「あのロリコン師匠はな、あたし達に将棋界を託して死んだんだ…! なのにこれ以上、今のメンバーが欠けていいわけねぇだろうが…!? それにお前とあたしは、名人戦でいつか必ず戦うんだ。死なないように大人しくしときやがれ!」


 俺は衝撃の事実に言葉が出なかった。


 そうか…。


 あのロリコンは…今にでもひょっこり現れそうなのにな。そうか、本当に…。


「篠崎六段…。羽野五段の面倒はしっかり頼みますわよ?」


 俺と香の前には、星六段、天音姉妹、よもぎ五段、そして、猫王にゃんおう鶏王けいおうが立っていた。


 俺が、これから先もずっと一緒に将棋を指していくであろうメンバーだ。


「少し休んだら…必ず俺も参戦するから…! みんな、それまで頼む…!」


 勿論、俺も死んではいけない。少し体力を回復させて、必ず将棋星人にトドメの一手を指してやる。


「話が長いね? そろそろ攻撃してもいいかい?」


 こちらの様子を伺っていた将棋星人は、不意打ちのように飛車を投げつけて来た。


「にゃ、ひと暴れするか!」


 猫王にゃんおうは全身に雷のオーラを纏った。初めて間近で見た…! これが噂の『雷神猫らいじんにゃんもぉど』。雷を全身に纏うことで、脳から筋肉へ送る信号のスピードを何倍にも増幅させ、超人的な身体能力を手にすることができる技だ。


「みなさん! わたくしを信じてそのまま将棋星人が投げた飛車に突っ込んでください…!」


 星六段の言葉に逸早く猫王が動き、その後に皆も飛車を手にして駆ける。


 将棋星人が投げた飛車は、星六段が風により軌道を大きく変えた。


「くそ…! なんでボクよりも弱い棋士達がここまで抵抗できる…!?」


「にゃ! 将棋は最後まで何があるか分からないんだ!」


 猫王は、将棋星人の五角形の顔を引っ掻いた。


「ぐあーっ! め、 目がぁー!」


 両目を押さえる将棋星人。


「さっきはよくも…」


「私達を踏み潰したね?」


 ランとリンが、ガラ空きになった将棋星人のボディへと重い一撃を入れる。


「おえぇっ!?」


 上空へと吹き飛ぶ将棋星人。


「よもぎ五段! 狙い打つぞ!」


「うん!」


 防御も取れない状態の将棋星人に、鶏王けいおうとよもぎ五段が、それぞれ卵と泥団子をひたすら投げつけ始めた。


「ぐわーっ!?」


 よし、効いているぞ…!


 頼む! このまま消滅してくれ!


「わたくし達も援護致しましょう!」


 星六段、天音姉妹、猫王も、とにかく飛車を投げまくり始めた。上空では大爆発が起きて、何がなんだか分からなくなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る