第87手 RIZAPでベジータみたいな修行方法も可能になった世界

 天音姉妹が将棋星人を吹き飛ばしたことで、俺らは重力から解放された。ヤツの能力が解けたようだ。


「ラン…!リン…!助かったぜ。」


 俺は、顔面を殴られたダメージもまだ残っており、フラフラしながらではあるが、なんとか立ち上がることができた。


「な…!? どういうことだ!? 今の重力で動ける人間がいるだと!? 一体、何の能力だ!?」


 殴り飛ばされて地面を転がりまくった将棋星人は、目の前で起こった不可解なことに対して、地面に這いつくばりながら叫んだ。


「「筋肉の力だよ!」」


 いつもに増して息がぴったりな二人。


「バカな! 筋肉で解決できるレベルじゃないぞ!?」


 将棋星人…。俺ら地球人を。いや、この姉妹を舐めてはいけない。


「筋肉で解決できるから私達は動けたんだよ?」


「そうだよ。私達は、ちょっと前に重力属性の敵と戦って以来、毎日重力装置を使った修行をしていたんだからね!」


 そう、ランは以前、重力属性を前に敗北した。


 しかしそれ以来、RIZAPの重力装置で過酷な負荷トレーニングを毎日続けていたのだ。流石の将棋星人も、筋トレが将棋の実力アップに繋がるとは思ってもいなかったようだ。


「そんなことが可能だと!? な…ならば…! お前ら二人には、さらに巨大な重力をプレゼントしてやる!」


 次の瞬間、ランとリンの足元が大きくヒビ割れた。一体、何倍もの重力をかけているんだ!?


「どうだい? この重力は!? まだ潰れていないのが不思議なぐらいだけど、喋ることはもうできないだろ?」


 ドヤ顔の将棋星人。


 しかし…。


「「軽いよ!」」


 ラン、リンは地面を蹴り、将棋星人の元へと駆けた。


「う、嘘!?」


 ラン、リンによる猛ラッシュが始まった。目に見えない程のスピードを持った拳が将棋星人を襲う。文字通り手も足も出ないようだ。完全に天音姉妹のペースである。


 強すぎる…!


「ま…待て!」


 将棋星人は、人間離れした動きを見せる二人にただただ戸惑うだけ。


「将棋に待ったは…」


「ないよ!」


 トドメのパンチが二人同時に将棋星人の顎を捕らえた。

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