第75手 物理法則なんて存在しない世界
「よお、ロリコン…。一足遅かったな。ちょうど今、名人を殺したところだ…!」
俺は地面に転がる名人の頭を指差して笑う。いつも良いタイミングで現れるロリコンも、今日ばかりは少し登場が遅かったのだ。
「たれぞーのオーラがおかしいと思ったら、どうやらジャック会長の訳の分からない能力でおかしくなったみたいだね…。」
ほう、理解が早いな。ロリコンは既に戦闘モードに入っている。闇のオーラが体から溢れているのが見える。だが、名人程のオーラは無いし、俺には
「
ジャック会長はニヤリと笑う。
「感想を聞いているのかい? まあ、どんな形であれ、弟子と将棋を指せることは嬉しいよ…。臨むところさ。」
ロリコンは、飛車ではなく歩を構える。振り飛車の奥義である『藤井システム』で来る気だろうか?
いいだろう! 俺が真っ向からぶっ潰してやるさ!
『死』と言う名の恩返しをしてやろう!
先手必勝!
俺は高速で飛車を投げつけた。
「速いね…。」
そうは言いつつも、たった一枚の歩で俺の飛車を捌いた。一歩も動かずに。
恐らく隙を見て一気に俺を攻め潰すつもりだろうが、そう簡単にはいかない。
「おい、ロリコン…。極玉を使っている俺には時間が無い。俺は次の一撃で勝負を決める。覚悟しろ!」
実は、極玉の副作用が体に出始めていた。体のあちらこちらが痛む。だから早めの決着が求められていた。
俺は、再び飛車にありったけのオーラを込める。ずっと以前より考えていた必殺技があった。それを今から試そう。
左手に飛車、右手に斬。
「死ね!」
俺は、飛車を思い切り投げ飛ばした。さらに俺は、極玉のお陰で高まった身体能力で、自ら投げた飛車の上へと跳び乗った。
超人的なバランス感覚が必要とされるが、今の俺にとっては容易だった。
「あっけない最期だな! ロリコン!」
完全にロリコンの意表を突いた一手だった。
「喰らえ。『新たれぞーシステム』!」
飛車の上に乗った俺は、光速移動しながら斬を振りかざした。斬った感触は確かにあったが、僅かにだがズレてしまったようだ。
「ちっ! 仕留めそこなったか!」
ロリコンの右腕を肘辺りから切断した。首のつもりだったが俺は少しミスをしてしまった。初めての技でもあったからこれから練習が必要だ。
ロリコンは片膝をつき、傷口を押さえている。俺は飛車の上から跳び降りると、トドメを刺すべく、斬を構えてロリコンの元へと歩む。
「おい! ロ…ロリコン!」
「香…。お前から死ね!」
俺は、斬を持って香を串刺しにしようと腕を突き出した。
しかし…!
「なっ!?」
俺は、思わず声が出た。死に損ないのロリコンが、香に攻撃が当たる瞬間、蹲っている状態からブラックホールで移動し、見事に香の盾となったのだ。自らの体を盾に!
俺の斬を持った右腕がロリコンを背中から貫いた。
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