第68手 チート属性がある世界

「あ、何だよクソジジィ!あたしらは、将棋復興の為に今頑張っているんだよ!文句あるか!?」


「文句だらけだ…。」


 このクソジジィ。会長のクセにこれまで将棋界のピンチには何一つ顔を出さなかった。それなのに、こんな時に限って現れやがって。


羽野はの 底歩そこふは、本当に将棋界の為によく働いてくれた。ワシの中で最も信用できる男だった。」


 は…?どういう事だ?


「底歩が死んで、どうやら最後まで残ってしまったのは、このワシだったようじゃの。さあ、君達…。もう無駄な抵抗は止めて将棋を指すのは諦めたらどうだね?」


「おい、クソジジィ!お前まさか!?『殺る将』達と繋がっていたのか!?」


 香が叫ぶ。しかし、返事など聞かずとも、恐らく答えは決まっている。今のセリフを聞いている限りだと黒幕はコイツだ。


「今更隠す必要も無いが…ワシの目的も世界征服なのだ。ワシと同じ考えを持っていた底歩とは、すぐに意気投合し、声をかけた。そして奴は、毒島ぶすじま門下をすぐに抜け出すと、ワシの右腕になってくれた。」


 このクソジジィ!性格悪いとは思っていたが、何て奴だ!こんなのが将棋界の会長だと!?


「この退屈な世界を変えれるのは我々棋士だけだ。AIの力を借り、AIを壊す。順調に事が運んでいるように思えたんじゃが、どうやら君達みたいな若手棋士らは、中々折れてはくれないみたいじゃのぉ。」


 クソジジィは、そう言いながら全身にオーラを纏い始めた。


 これは一体何属性だ!?


 初めて感じるタイプのオーラだ。


 しかし、俺らがこれまで戦ってきた強敵達よりも遥かにオーラ力は劣る。相手はクソジジィ一人、今いるメンバーだと必ず勝てる!


「君達を殺せば、ワシの夢は目前だ。覚悟せい。」


 しかし、油断は禁物だ。得体の知れない属性だから何が起こるか分からない。


 先ずは様子見だ!


 俺は、光属性を込めた飛車を投げつけた。あれから更に修行を重ね、投球スピードはかなり上がっている。こんなクソジジィが避けることなど不可能だ。


 しかし…。


「え?」


 直撃の寸前、俺の投げた飛車からオーラがパッと消え去り、飛車は虚しく地面へと転がった。

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