第69手 殴り殺す方が早い世界

 どういうことだ?


 駒に纏わせていたオーラが…消えた?


「老いぼれだと思って油断していないかの? 確かに若者だけあって素晴らしい量のオーラじゃ。だがしかし、ワシの『じゅ属性』の前では全てのオーラを無効化される。」


 何…だと…?


 じゃあ俺の込めたオーラは、呪属性によって掻き消されたってことなのか? これは予想外だ。


 しかし、俺はある重要なことに気づいた。


「待てよ…? これは公式の将棋の対局じゃないんだ…。属性が使えないなら、駒を使わずにを使って戦えばいいんだ…!」


「し、しまった…! バレおったか…!」


 慌てふためくジャック会長。俺の背後ではそれぞれ、かおり、星六段、よもぎ五段が既に凶器となる長箒、研究室にあった怪しい薬品、斬れ味の良さそうなメスを持って構えていた。


 これは将棋じゃない、命を賭けた殺し合いなんだ。いくら相手が老人だからと手加減などしてはいられない。先手必勝。


「おら、クソジジィ! あたしらがテメェに引導をくれてやる! 死ねぇ!」


 狂気に満ちた表情をした女性棋士2名と、男の娘棋士1名は、無防備なジャック会長に一斉に襲いかかった。箒でひたすら殴りつける香、薬品を浴びせまくる星六段、メスで斬りまくるよもぎ五段。


「ぎゃーーーー!!!」


 クソジジィの断末魔の叫び。


 まさか、全ての元凶がこのようなあっけない最期を迎えるとは思ってもいなかった。

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