第56手 絶望しかない世界

 邪龍は、串刺しにした星六段を手で掴んで引き抜くと、地面へと適当に放り投げた。


 ぐったりと動かない星六段。


 香も…動いていない。


 くそ…!なんて化け物だ…!


「お前は、頭を踏み砕いてやろう…。」


 ついに俺もトドメを刺される時が来てしまったようだ。邪龍が俺の頭上で巨大な足を高く上げる。


 クソが…!体、動いてくれ…!


「「はぁー!!」」


 突如、威勢の良い声と共に凄まじい轟音。ラン、リンの拳が邪龍の後頭部へとヒットした。


 相手が普通の人間ならば、頭が飛んで行く程の威力は秘めている。


 だが、やはりビクともしない。


 ラン、リン…!


 お前らだけでもいいから逃げてくれ!


「本当に小賢しい奴らだ…。」


 邪龍は、ラン、リンの、どちらか知らんが拳を掴みあげた。


「ラ…ラン!!」


 どうやら、拳を掴まれたのはランの方らしい。


「死ね。」


「あっ…!」


 邪龍は、ランの右腕…いや、右腕どころの騒ぎじゃない。右肩、右胸辺りまでを強力な顎で喰い千切った。


 骨が砕ける不気味な音。


 邪龍は、ランの体の一部を食べてしまった。バリバリと、骨が砕かれる音が響き続ける。


 おぞましい光景。


 そんな中ランは、冷静にも自らで、惨たらしい傷口を飛車で焼いた。出血を防ぐ為の非常手段だった。


 しかし、肺の一部までもが露出している程の傷口。ランは、フラフラとよろめくと、急に意識を失って倒れてしまった。いや、それとも…


「ラ、ラン…!」


 余りの衝撃的な光景に後ずさるリン。


「次はお前だ…。」


 邪龍は、手から闇のオーラを放った。凄まじい威力、そしてスピードを兼ね備えたは、リンの体へと直撃した。


「うっ…!」


 リンは、闇のオーラが直撃した瞬間、大きく目を見開いて固まってしまった。そして、しばらくすると腹を抑えて苦しみ始めた。


「うっ…ごっ…!!」


 目、耳、鼻から血がダラーッと流れてくる。


「ぐぶっ…!?」


 ついには大量の吐血。異次元レベルの闇の瘴気。体内から完全に破壊されてしまったようだった。


 天音姉妹までもが手も足もでない。


 俺らプロ棋士は、僅か数手で全滅した。


 ————————————


 キャラ紹介11


 豊田とよた さき九段


 37歳


 風属性


 レーティング:17900

(棋力12500、オーラ力5400)


 歴史上ただ一人の名人位を獲得した女性棋士。超絶美人。何故か毒島ぶすじまとは縁がある。

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