第42手 対局者自身が飛車の如く動く世界

「二人分のオーラを込めただと…!?」


 驚きを隠せない様子の狂死きょうし。悪いが、お前が飛車に込めたオーラを完全に上回った。かおりの水属性も込められた『斬』で、お前を斬る…!


「このオレが、こんな所で負けてたまるかぁ…!!」


 狂死きょうしは、ヤケクソになって飛車を投げて来た。


『新たれぞーシステム』


 俺は、飛んで来た飛車を目掛けて走った。もう不安は無い。何も怖くない。俺自身が飛車の如く、突っ込んでやる。


「俺は名人になる男だ…!お前みたいな腐った奴には絶対負けねぇ…!」


 俺は、寸分違わぬ駒捌きで、狂死きょうしの飛車を真っ二つに斬り捨てた。更に、俺は躊躇なく前へと踏み出し、狂死きょうしの懐へと潜り込んだ。一瞬、恐怖の表情を浮かべているヤツと目が合う。悪いが…腐れきった将棋界を変える為、俺はお前を殺す…。


『斬』を上に振りかざし、頭から股下まで一気に降ろした。


 宙には、紅黒い血、香のオーラから発生した水飛沫が散る。それらが俺の込めた光属性でキラキラと輝きながら舞っている。


 狂死きょうしの体は真っ二つになり、飛車と同じ運命を辿った。


「にゃにゃ!?狂死きょうし九段!?」


 猫王にゃんおうの奴が戸惑っていやがる。


 猫王、周りをよく見てみやがれ…!倒れたのは狂死きょうしだけじゃないぜ?


「にゃー!?そんなバカな!?犬王けんおう万田まんだ七段!」


 既に、他も勝敗は決まっていた。地面にひれ伏すのは、皆、猫王の同志達。そして、当の本人さえも追い詰められていた。


「猫王!お前はもう終わりだよ…!」


 豊田とよた先生も勝勢だ。更には、戦いを終えた、ほし六段、鶏王けいおう、それに、きなこ五段、カリン四段が猫王を取り囲む。


 もう猫王に勝ち目はなかった。

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