第39手 背中を見せると死ぬ世界

 俺は、かなりの数あった、口の中に詰め込められた歩を全て飲み込んでしまった。意識は朦朧とし、犬王けんおうは、俺の体を地べたへと投げ飛ばした。


「ワンワン!そろそろトドメだ。」


 犬王は、一枚の歩を持ち、仰向けに倒れている俺を、真上から見下せる位置まで来る。


「喰らえ、『叩きの歩』!!」


 犬王は、俺の鳩尾に思いっきり歩を叩きつけた。やはり、とんでもない馬鹿力だ!俺の胃に入ってある歩同士が、中でゴリゴリと互いにぶつかる音がする。


「がっ…ぐ…ふっ…!」


 俺は耐えきれず、胃に溜まっていた大量の血液と、数枚の歩を吐き出した。凄まじいぐらいの気持ちの悪さ。視界が益々ぼやける。


 だけど…犬王。


 お前の相手は…俺だけじゃないんだぜ…?


「ワン?」


 犬王の体が、頭から股下まで真っ二つに綺麗に割れた。


「タイトルホルダーの割には、終盤に隙がありますわね。きなこ五段…羽野五段を急いで治療してあげてください。彼には、篠崎六段を助ける仕事がありますわ。」


「は…はい!」


 星六段ナイスだ。きなこ五段の治療で、腹の穴が塞がったようだ。見事に復活し、不意打ちではあるが、犬王を一撃で倒してくれた。


「わたくしは、師匠を…いや…万田を必ず仕留めますわ。あなたは、早く回復して篠崎六段の援護を…。」


 星六段は、万田七段と鶏王が戦っている場に風を纏って飛んで行く。そして、きなこ五段は、俺の回復を始めてくれた。


 これが聖属性の癒しか。だんだんと体の痛みが和らいでくる。

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