第34手 デスゲームが始まる世界

まもなく前夜祭が始まる。


赤い絨毯が敷いてある、立派なホテルのとある広間に、決勝トーナメントへと進んだ12名は集まった。


だが、嘆かわしい事に…前夜祭に足を運んでくれたファンは一人もいなかった…。これ、やる意味あったのかよ?盛大な会場だけに、余計に淋しさが際立つ。


「にゃっ!本戦トーナメント出場が決まった諸君!おめでとう!」


突然、猫王が広間前方に立ち、喋り始めた。


「えーっと、それじゃあ、メンバーが揃ったし、狂死きょうし九段、準備を!」


狂死きょうしは何故か、強いオーラを全身に纏い始めた。次の瞬間、一気にオーラは解放され、広間の壁から床、そして天井までもが一瞬にして闇で覆われた。


「にゃ!これで外部からの邪魔は絶対入りません!てことで、猫王にゃんおうの座を奪いに来た者同士で殺し合いをしてもらいます!」


「は!?どういうことだよ!?ぶっ殺すぞ!」


かおりが突然のことで怒りを露わにする。


「にゃ!それでは12人の中で一斉に大乱闘をしてもらい、最後に生き残った一人が僕への挑戦者になるデスゲームを開催します!」


ふざけるなよ!?猫王の奴、こんな大胆なことをして大丈夫だと思っているのか!?


「レオ…お前、一体何のつもりだい?これは由緒あるタイトル戦なんだぞ?」


豊田先生が言う。


「にゃんだ?豊田九段…文句あるのか?あの小僧と同じ所へ一番に行くか?あの小僧は…。」


その言葉を聞いた瞬間、豊田先生は、風のオーラを纏い、全力で猫王に殴りかかった。だが、猫王は避けようとはしない。寧ろニヤニヤとした表情で身構えることもしなかった。


豊田先生の攻撃が猫王の顔面を捕らえようとした刹那、突然ワープして来た狂死きょうしが、豊田先生の頰を思いっきり殴り飛ばした。


「ぐあっ!」


あまりの威力に軽く10メートルは吹き飛ばされた。


「豊田先生…!」


俺とかおりが急いで先生が倒れている所まで駆ける。


「ぐっ…!」


豊田先生は、フラフラと起き上がる。口と鼻からは血がボタボタと溢れ落ちていた。


「お…お前らが…金太郎を…!」


「先生!俺とかおりも加勢します!」


俺ら二人は、先生の前に立ち、猫王と狂死きょうしを睨みつける。さらにそこへ…


「豊田先生…!わ…私は…先生の治療を…!」


香山かやま きなこ五段も駆けつけてくれた。聖属性の力で先生の傷をゆっくりと回復させる。


「きなこちゃん…すまない…!」


先生の顔の腫れが見る見る引いていく。聖属性はこんな時ありがたいな…。


万田まんだ先生。わたくし達も豊田九段の元へ!」


星六段と万田七段の師弟コンビもいる。流石に、これだけの人数が揃っていれば勝てるだろう。ただし、猫王が喋っていた話が本当なら、この中にまだ裏切り者がいる。


残るは、陰陽師おんみょうじ 沢庵たくあん八段、ゾゾ・カリン四段、犬王、鶏王。


油断はできない。本当にいるのか?まだ裏切り者が…。


「あ、星さん…勝手に動かないで…。」


万田七段が言う。


「えっ?」


「ほら、心臓から大きくずれちゃった。」


『斬』の駒を握りしめた万田七段の手が、星六段の腹部に手首まで突き刺さった。

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