第33手 将棋界滅亡へのカウントダウンが始まっている世界

「なんで、ボクだけが予選敗退なんだよー。」


 いじけている様子のロリコン師匠。かおりも六段トーナメントで見事に優勝を果たし、本戦入りを果たした。師匠は、見事に準々決勝で豊田先生にボコボコにされ、惨敗を喫したのだった。


「まあ、今回は仕方ねぇぞ!豊田先生は、金太郎の件もあるし、勝負に賭ける執念が違うんだ!」


 香は、優勝したことが嬉しいらしく、本日はご機嫌のように思える。


「ボクも弟子と公式戦で戦いたかったよ…」


 なるほど。将棋界において、師弟対決と言うのは、確かに一大イベントではある。ちなみに、星六段も予選を突破し、その師匠である万田まんだ七段も本戦入りを果たした。しかも、既に一回戦で当たることが決まっているので、夢の師弟対決が実現するのだ。


「まあ、あたしがタイトル獲得するのを応援しとけ、おっさん!」


 かおりは、金太郎を殺した犯人が猫王にゃんおう狂死きょうし達と言う事実は、まだ知らない。俺と師匠だけが知っている事実だ。俺は、香の安全の為にも事実を伝えたかった。


 だけど、それを伝えたら、香の性格上熱くなって、余計に危険なことをしかねない。だから、師匠も香には言わないんだろう。


「よし、じゃあ前夜祭、行ってくるわ!」


「うん、香ちゃん気をつけるんだよ。」


 そう、今日は、本戦入りを果たした12人が集まっての前夜祭。そこで、人口の少ない将棋ファンとの交流イベントが行われる予定だ。


 俺と香は、前夜祭が行われる都内のホテルへと向かった。初めてのことで緊張もするし、猫王のこれからの行動も気になる…。


 そしてまさか…将棋界を揺るがす大事件がこれから起こるとは、知る由もなかった。

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