第3局 猫王の野望篇

第24手 ブ◯ーチ-BLEACH-の世界

 さあ、いよいよ今日から猫王にゃんおう戦の予選トーナメントがスタートだ。


 猫王戦は予選が少し特殊で、のトーナメントとなっている。つまり俺は、五段同士で戦う、を勝ち上がらなければならないということだ。


 更に、もし一回戦に勝てば、同日に2回戦目の対局も行われるので、オーラの温存も鍵となる。


 俺は、これより第1回戦、藍染あいぞめ 惣太そうた五段との対局だ。彼は、若手でありながらもかなりの実力者で、A級棋士をも次々と破った実績がある。まあ、嘆いていても仕方がない。いきなりの強敵だが、タイトルを獲る為には、いつか勝たねばならない存在だ。


 さあ、対局のスタートだ。


 先手は俺。


 静かに飛車をCまで浮かせる。


 藍染五段も同じく飛車をCまで浮かせた。相浮き飛車になりそうだ。俺は、隙を作らず、慎重な駒組みを進めて行く。


 そんな中、先に隙を見せたのは意外にも藍染五段であった。飛車がタダで取れる!どうやらかくのラインを見落としていたようだ。


「よし!」


 俺は、100手目目前にして優位に立つことができ、勝ちへと一歩近づいた。


 だがしかし、それは一瞬の喜びに過ぎなかった。


羽野はの五段…一体いつから私の飛車を取ったと錯覚していた?」


 俺は、言葉の意味が分からず盤面に目を向ける。すると、俺の角は、どういうことかのだ。


「なん…だと…!?」


 俺の角は、確実に藍染五段の飛車を取った筈なのに。俺は、納得がいかないが、渋々と自らの飛車を駒台に置く。こんなこと初めてだ。


 そう言えば聞いたことがあったな。藍染五段は、不思議な能力を持っていると。水属性だと噂では聞いたことがあるが、これが本当に水属性なのか?


「くそっ!どんな能力だか知らないが…最後に勝つのは俺だ…!お前に勝って、必ずタイトルまで辿り着くんだ…!」


「…あまり強い言葉をつかうなよ。弱く見えるぞ。」


 藍染五段は、薄ら笑みを浮かべると、静かに飛車を手にした。


にじみ出す混濁こんだく紋章もんしょう

 不遜ふそんなる狂気の器

 湧き上がり・否定し・しびれ・瞬き 眠りを妨げる

 爬行はこうする鉄の王女

 絶えず自壊する泥の人形

 結合せよ 反発せよ

 地に満ち己の無力を知れ


 破道はどうの九十 『48四十七B飛成』!!」


 焦りが出ていた俺を追い込むように、長ったらしい詠唱まで唱えられ、いきなり飛車を成り込まれた。やばいぞ。一気に寄せられるかもしれない。完全に動揺してしまっていた。


 藍染五段は、挑発のつもりか、優雅に紅茶でも飲んでいやがる。俺は、何も攻略方法が見つかっていない。このままだとジワジワと差を広げられてしまうだけだ。


「君はオーラだけが取り柄のようだが、それは果たして私に届くとでも思っているのか?」


 さっきから挑発ばかりだ。これは罠だ。冷静さは絶対に失わないぞ。俺は、自ら取ってしまった、駒台にある飛車を、再び盤上へ力強く叩きつける。どうだ?俺は絶対勝つからな?


 しかし、またここで俺はとんでもない失態を犯していることに気がついた。


「そうか…君は私に飛車をくれるのか。些か滑稽に映るな。冷静を装いつつも本心はどうなんだ?」


 なんと、俺が敵陣に打ち込んだ筈の飛車が…その飛車先が俺の方を向いていた!いくらなんでもそんなミスを犯す筈がない。俺の駒が、藍染五段てきに寝返っただと?


「不思議そうな顔をしているな。確かに私は水属性ではない。しかし、それに近い性質を持つ霧属性だ。その能力は、完全催眠…君は私の玉に迫ることはできない。」


 そうか、藍染五段は霧属性だったのか…!超希少属性の一つなんだ!俺のチャンスはそこしかない。霧を逆手に取ってやるぜ!


「藍染五段…お前の負けだ…!」


 俺は、飛車に光属性を込めた。霧。つまり、ここらの空気には大量の水分がある。狙うは、光の散乱…いや、だ。


 空中に向かって、光属性を纏った飛車を思い切り投げる。すると、飛車が空気中の水分で屈折をひたすら繰り返し、そして無数の飛車に分裂した。


「終わりだ…!」


 俺は、数えきれない程にまで増殖した飛車で、一斉に藍染五段の玉を狙い撃ちにした。


「ぐっ…!バカな…!この私のぎょくが…!弱者の前に屈するだと…!?」


 決着は一瞬だった。


 藍染五段のぎょくは完全に砕け散った。


「まで、329手を持ちまして、羽野五段の勝ちとなります。」

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