第12手 日本将棋連盟の会長が日本人じゃない世界
俺は、
「そうか。『
パンロング・ヨウ・ジャック会長。
この目力の強い、白髪頭のじいさんが将棋連盟の会長である。俺は、普段話す機会は滅多に無いが、あまり得意なタイプではない。
「いやー、この子達の話を聞く限りだとね。その『殺る将』の人、中々の強敵だと思うんだけどね。」
師匠は、頭をボリボリ掻きながら言う。
「プロが『殺る将』に負けることなどない。我々がすべきことは、常にプロの指す将棋との違いを見せることじゃないのかね?
「おい、ジジィ! てめぇ、会長だか何だから知らねぇがよ! 同じ棋士が傷ついてんだ! 労いの言葉、一つや二つぐらいかけてもいいんじゃねぇか!?」
「おい、香! 抑えろ!」
ジャック会長に殴りかかろうとする香の腕を俺は必死に掴む。
「
暴れる香のことなど眼中に入れず、話を進めるジャック会長。
「いやー、若手じゃなくて、ボクぐらいの年齢のおっさんやおばさんが行った方がいいんじゃないの?」
「ならぬ。ベテランが動く必要などたい。ただ、『殺る将』には、子どもにすら敵わないと言うことを見せつけるのだ。格の違いをだ。」
「んー、会長、ボクはね、もし若手棋士が万が一にでも殺されて、欠けてしまったら駄目だと思うんだ。この子らは、将棋界の宝なんだよ。」
珍しく良いこと言うじゃねぇか、ロリコン師匠。
「
「……。」
何だよ、この緊迫した空気は! 香は、まだ俺の腕の中で暴れているし。
「もうこれ以上は言わせぬ。7人を今すぐ君が推薦しなさい。」
困り切った顔の師匠。
「だぁー! じゃあ、一人は、このあたしじゃ、ボケジジィ!」
香のバカ。
「それと、あとは、この
なぜ、俺も巻き込む。
「
「ボクは、自分の弟子なら信頼しているよ? だけど…」
「
星六段まで…
「やはり、
皮肉ったらしく言うなよクソジジィ。
「おい、クソジジィ! あとは、あたしのダチの
勝手に決めまくる香。師匠も、そんな香を止める気が無いような表情をしている。
「あと一人、足りないようだが?」
確かに。
俺らと同い年ぐらいで気軽に頼めそうなやついたか? 色々と同期の顔を思い浮かべていたが思いつかない。
悩んでいる最中。
「それなら僕が行くよ、会長。」
突如、部屋の扉が開く。
「お前か…お前が行くなら一先ず安心だな。
俺は生で初めて見た。史上最年少名人、佐藤
「話は外で聞いてたから、大丈夫だよ。」
「決まったようだね。
ジャック会長は、立派な椅子をくるっと回転させて、俺らに背を向けた。
「やれやれ…てことで、会長。ここにいるメンバーと、先程口頭で述べたメンバーの合わせて7人を推薦します。これでいいの?」
師匠の問いにしばらく無言の会長。
「ああ。明日はよろしく頼むよ。君たち…」
会長は、窓から外の景色を眺めながら静かに言葉を発した。俺は、窓に反射して映る、ジャック会長の目が怖かった。
————————————
《プロ棋士データベース、その2》
12歳プロデビュー
浮き飛車党
属性:水
得意戦法:
レーティング:14100
(棋力10700、オーラ力3400)
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