第2局 殺る将篇
第11手 殺る将がいる世界
俺は、あの対局後、即、病院へ運ばれて治療を受けた。数年前に見つかったSTAP細胞のお陰で、後遺症を残すことなく、比較的早く完治ができた。
そして、俺は昨日、
実は、
まあ、あの
ちなみに俺を勝手にライバル認定している
実はアイツ、プロでありながら属性を扱えないのだ。つまり、無属性だ。
全て、己の頭脳だけで勝つ、超天才タイプなのだ。
それとは対照に、オーラ任せの将棋を指す俺をライバル視する理由は、なんとなくだが分かる気がする。
「おい、たれぞー! そういやお前、
そう、
「えっと…誰だったかな? 忘れちまった。」
「ほんと、お前そういうとこ根性ねぇよな!」
今俺は、
その道中…
「あら、
星 キラリ六段だった。
「お二人でデートですか?」
「んなわけあるか、ボケ!」
いつものように完全否定だ。傷付くぜ。
「星六段も将棋会館に向かっているのか?」
俺が尋ねる。
「ええ、わたくしは師匠に来るように言われまして、それで今向かっている道中なのですわ。」
この人の師匠は、
コンピュータにすこぶる詳しく、AIは自らの友達だと公言している人物だ。また、緻密な機械が埋め込まれている現代将棋の駒作りにも携わっている。まるで、博士だ。
博士の白衣と星六段の黒いセーラー服のコントラストが素敵だぜ。
「助けてくれーー!!!!」
その時、将棋会館近くにある、神社の境内の方から、凄く聞き覚えのある叫び声がした。
声のする方を見てみる。
「金太郎…!」
なんと、金太郎が黒いフードを被った男に背中を踏みつけられていた。急いで俺達3人は、助けへと向かう。
「何をやっているんだ! 足をそいつから
俺は叫ぶ。
一方、星六段が、持っていた鞄の中から、サッと、
しかし、その男は避けようとはしない。
「なっ!」
なんと、フード野郎に駒が当たる寸前に、ブラックホールの様な物が出現し、駒を異空間へ吸い取ってしまった。
「あなた、棋士ですわね…。」
そのとき、俺の頭にはある言葉が過った。
『
近年、将棋の人気というものは衰退して来たものの、ある、賊が現れるようになった。
それが、近代将棋を影から脅かす『殺る将』だ。
その昔、将棋の全盛期には、観る将、食べ将、撮る将など、将棋を自ら指さずとも、様々な形でファンが存在したと聞く。
だが、『殺る将』は、ファンとは決して呼べない奴らで、将棋に自信がある者が、我こそはと、突如としてプロ棋士を殺しにかかるのだ。
実際に、『殺る将』に殺されてしまったプロ棋士は過去に数人だが存在する。
「おい、てめぇ! 顔見せねぇとか卑怯じゃねぇのか?」
香がいつも通りヒートアップして来た。フード野郎は、顔を闇属性で覆っているようで、表情すらも分からない。
「
俺らのことは、当然の如く知っている様だ。
「俺は将棋連盟に宣戦布告をしにやってきた。」
宣戦布告だと?
「明日の夕方5時に、選抜したプロ棋士7人を連れてここへ来い。我々の方は既にメンバーを揃えている。もし、断るのなら将棋界の未来は無いと思え。」
「ふざけんなテメェ! ブチ殺すぞオラァ! 今勝負しろや!」
香は助走をつけて、フード野郎に飛び蹴りを喰らわそうとする。
しかし、フード野郎は、モワモワと煙のようにその場から消え去ってしまった。
「くそ…逃したな!」
悔しがる香。
「今のフード野郎…。只者じゃなかったな…。香、先ずは師匠に報告へ行こう。」
「あ…ああ、そうだな! マジ、許せんなアイツ!」
俺と、香、星六段は、今の『殺る将』の件を報告する為に、金太郎を地面に置き去りにしたまま、将棋会館へと向かった。
ところで、俺はフード野郎の声。
どこかで聞いたことがあるような…。
————————————
《プロ棋士データベース、その1》
16歳プロデビュー
投げ飛車党
属性:光
得意戦法:初手不意打ち投げ飛車
レーティング:7800
(棋力1200、オーラ力6600)
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