ep.3 逃走の発端
俺の名前は菊野秋仁。時計は現在、丁度8時を指しており、夕飯を作っている。
毎日母親が家に居ない為、家事は大体俺がやる。
「ふぅ…完成」
冷蔵庫の材料を見て、作れたのがシチューだった。
美味しそうな香りが俺の鼻をくすぐる。
料理の腕はこう見えても立つ方だからな。
早速、食べようと皿やら箸などの支度をしていると玄関がガチャリと開いた音がした。不法侵入者かと一瞬焦り、玄関の方へ警戒しながら近寄る。
そぉっと扉を開き、玄関を見ると………
「か、母さん!?」
「秋仁?どうしたの?そんなに驚いて」
確かに母さんが家に帰宅するのは当然の事だ。
しかし、何故今日はこんなに早いのだろうか。
「早いんだね…何かあった?」
「ええ。ご飯でも食べ終わったら話すわ」
「おう」
俺は急いで母さんの分の食器を用意し、シチューをついだ。そのシチューを美味しく食べる母さんは、これといった変化は無い。
「母さん。そろそろ……」
「そうね。単刀直入に言うと転勤する事になった」
「えっ!?転勤」
「うん。隣の県までね」
「急すぎだよ……いつ頃からなの?」
「来月の10月からよ」
「って事は俺も10月には転校って事か」
「そうなの……ごめんね、大切な友達とお別れさせちゃって」
「ま、仕方ないよ」
俺は夕食を終え、風呂が沸くまで自室でくつろぐ。
頭の中は先程の転勤の事でいっぱいだった。
転勤か……。小春と大智とさよならだな。
「やったぜッ!」
しかし、全く悲壮感は無い。友達の大智達と離れる のは寂しいがそれよりも小春と会わなくなるという喜悦が上回っている。あの苦痛は以後は無い。
母さんは俺に謝っていたが、嬉しい限りだ。
9月中旬、菊野秋仁の逃走の発端はここからだ。
逃走と追走 マフィコン @miyakazu
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