小説指原莉乃外伝~1%の奇跡、峯岸みなみ的あの日
マナ
峯岸みなみ的あの日
私は峯岸みなみ、知る人ぞ知るAKB48第一期生、いわゆるオリメンと呼ばれる中のひとり。優子、敦子、たかみな、小島さんと続く黄金の系譜、だから私も、と言いたいところだけど実際はそうではない。
組織というのは長く入れば顔も売れる、然るべき評価もいただける。それなりの努力をすれば、そこそこの地位がその年数によって与えられ序列が進んでいく。頭のそうよくない私でもそれぐらいは分かる。
ただそれがアイドルグループだと事はそう簡単にはいかないらしい。
あたりまえだけど、そこには雑多の要素が絡み合ってくる。
努力、才能、運、そして極まれにやってくる大逆転へのシナリオ・・・・・
2012年6月16日未明
原稿を持つ、手の奮えがとまらなかった。胸の鼓動が少しずつ早くなっていくのを感じた。
落ち着け、そう思うほどに緊張感は増していく
「なんでこんな日に私たちなのよ、みーちゃん」
あっちゃんの言葉は私の心の叫び。
泣いてるんだろうな、さしこ、そう思った。
涙なんてこの七年間、嫌というほど流してきたけど、この日の涙は違う。色も違うし意味も違った。
だから、なによりも控え室でじっと出番を待つさしこを想った。
もう彼女はその時、覚悟を決めていたのかもしれない
公開処刑、公開裁判、ネットで囁かれる数々の中傷
もう彼女に進む道は与えられない、私を含めてみんながそう思いはじめていた。
指原莉乃の為に用意されたオールナイトニッポンの時間
でも交差する彼女と秋元先生との想いは全く違っていた。
一秒一秒の重さが身に染みていた。
これほど時間が早く過ぎればって思った時はない。
大分に帰ったら何をしよう、そればっかり考えてた。
でもそこでやりたいことなんてなにもない。全ては東京に出るときに捨ててきた。
今更なのよ、私にとって大分は。だからもう覚悟しかなかった。祈りに近い覚悟。
後にみーちゃんがあんな事をしたけど、そんなのは思いつきもしなかった。
気づいてたらやってたと思う。それで今の全てがちゃらになるのなら・・・
そんなさしこの想いに秋元先生は早々に答を出す。それは彼女にとっては想いもしないもの。その時の彼女の涙を誤解した人は多いかもしれない。
悔し涙、後悔、懺悔の涙。でもこれって、さしこにとってウルトラセーフの涙。
それは地獄に届いた天国からの手紙のように見えたのかもしれない、さしこには・・
AKBという枠の中で彼女が小さく収まってしまうことを恐れた。
買いかぶりすぎと笑われたら返す言葉もないがその時はそうだった。
このままでは彼女は少しばかり器用に生きれる、そこそこ人気のあるバラ専メンバーで終わる。
スキャンダルに頭を叩かれて才能を飛ばされてしまう素性を指原は持っている。
だから今さえ乗り切れば指原莉乃はとてつもなく大きくなる。その確かな予感めいたものが俺にはあった。
博多行は確かにギャンブルだったのかもしれない。懲罰的な部分もなかったといえば噓になる。
けれどあの時の選択がベストだったという俺の信念は今も揺るがない。
努力は必ず報われる、だれかが言った、今世紀最大のギャグが頭に浮かぶ。
努力だってアイドルの世界では普通に汗水流していてはダメ。その見せ方なりを工夫する、
ざぁとらしくなく、見せれるところで魅せれる才能。ただ私もやったけど、これが超むずかしい。
複雑に絡む運と言った要素もそこには当然でてくる。運も実力のうち、そう言ってニッコリ笑えるのが真のアイドル。
そういう意味では、努力と運、その両方を極めたのが誰あろう我らがAKB48現総、横山由依ちゃんだよね。
断わっておくけど決して私は由依ちゃんをディスっているのではない。
ただ私にないものを全て持っている彼女を形を変えて嫉妬している、それだけ。
とにかく、才能がないなら努力、フツーの人なら、そんな道もAKBでは残念ながら開かれてはいないということ。それがきちっと理解できていない子がAKBには案外多い。
才能と努力、AKBでは歌って踊って話せる、そしてひととなり、それに加えてビジュアルもその子の才能と呼ぶ。
誤解を恐れず敢えて言うなら、ビジュアルでその子のいく末は99%決まる。これは間違いのないところ。
べつに大向こうを意識して言っては無い、それは私のAKB人生で唯一悟ったマイセオリー。
残る1%の確率を求めて、もがき苦しんできた子達を私は嫌と言うほど知っている。
努力はほどほどにあとはあきらめて運を天に任す、変に横山なんかの真似をしようとするから可笑しくなる。私は何なんだろう的な、自己矛盾症候群に陥っちゃう。
99%と1%、、あとイチパーで巻き返すことの奇跡、それを魅せてくれた人間を私は二人知っている。その一人は全てのAKBを夢見る子たちに希望を与えた、松村香織。
言い方はあってるかどうかわからないけど、最低ビジュアルでここまでやれるということを証明した数少ない一人。少なくとも私もやれる感をみんなに与えたことは確か。
そして指原莉乃。私達はさしこのこの成り上がりを指原モデルと呼んでいる。
これはさしこに突っ込まれるまでもなくディスリが入ってる。
ただし敬意と羨望を込めたディスリ。
わずかに与えられた運で逆境をばら色に塗り変えたさしこのイチパーの奇跡に私達もひとときの夢を見た。
でも笑っちゃうのは、このイチパーのさしこの奇跡をバラ専の圏外の子達が目指すという嘘のようなホントの話。先にも言ったけど、彼女を目標と言うなら、行く先に待っているのは自己破綻でしかない。
AKBは弱者と強者の物語、敗者と勝者のストーリーという人もいる。
それをどのように魅せるのか。大人たちはそのことに日夜頭を悩ます。
そんなことを恨むでもなく憎むでもなく、鼻で笑い飛ばす程の覚悟、にっこり微笑んでおつかれさまと何事もなく言ってやる
そんな覚悟なくしてはこの世界では生きていけないんだよ、
可愛い後輩たちよ、神様の天分によって恵まれたものはそのまま突っ走れ、あんたの栄光はもう目の前だ。。
けど運悪く配分に漏れたものたちよ、怯まず腐らず、ほかの道を探せ、王道なんてほんの一握り、夢見るものは沈んでいく、深い暗闇の中に。
私は峯岸みなみ、心はまだその暗闇のなかにある。
小説指原莉乃外伝~1%の奇跡、峯岸みなみ的あの日 マナ @sakuran48
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