第二十五回 漢の劉約は死して後に反魂す
漢主の
十七番目の皇子である
幸いにも二人とも生き残ったが、劉約は病に伏して立ち上がれなくなる。
生母の
その妻は劉約の死を悼んで埋葬を
胸のあたりを触ってみれば、そこも生きているように温かかった。
※
翌日、婢女たちが退出して沐浴する間に劉約は息を吹き返した。妻が愕いて顔を見つめると、問いかけて言う。
「どうしてお前がここにいるのだ」
「ここは宮中です。貴方は何があったかご存知ないのですか」
「離れてから随分と時が過ぎたように思うのだが」
「貴方が死んでから七日目になります。中指が温かかったので夫婦の情を忘れられず、埋葬せずにいたのです。よく生き返れましたね」
「人目を忍んで外に出れば、
「馬鹿を言ってはなりません。先帝が
その言葉を聞くと、劉約は目を瞑って次のように語った。
気づけば
吾が進んで拝礼すると、「せっかく来たのだから、吾が諸将に引き合わせてやろう」と劉霊将軍は言われ、ともに大きな城に入った。
宮殿のような建物の門には
▼「行宮」は皇帝が国都を離れた際の在所を言う。
そこでは
顧みれば、二門の内には
「
「汲桑は漢家の功臣であるが、
ついで、関防将軍が
崑崙山の高さは三百里を超え、五日ほどでようやく見終わった。その後、国王に謁見すると、王は吾が高祖であった。高祖は吾を連れて宮殿を巡り、一番奥にある
入ろうとすると止めて言われる。
「この宮には蜀漢の
その言葉を聞くと、「奸変が生じると知っておられるならば、何ゆえに密かにこれを防ぎ、
高祖はただ首を横に振り、「人を多く殺したために天数はいかんともできぬ。お前はただ速やかに平陽に還るがよい」と言われ、吾を城から送られた。丸一日行くと
国王は駕を遣わして吾を迎え、宮城に到って謁見すると宴会を開いた。その席で吾に
いよいよ城を発つ段になると、「
この堂に入ると婢女たちは逃げ去り、猗尼渠餘國の使いは皮嚢を卓上に置いて帰っていった。疲れたのか立っていられず、内に入って横になり、溜息を吐いたところでお前が来たのだよ。夢かと思っていたが、七日が過ぎているとは思わなかった。
これまでに見聞きしたところを述べると、劉約は改めて言う。
「体の調子も悪くない。茶を一杯貰えるだろうか。吾は聖上に見えてこのことを伝えねばならぬ」
劉約の妻が人を呼びに出ようとすると、卓上に皮嚢を見つけた。嚢に「渠餘王封」の四字が記されている。妻は劉約に茶を出すと、後宮に入って呂后に見えて事の次第を申し述べる。
伝え聞いた劉聰が皮嚢を取り寄せて開ければ、内に白玉の簡が入っており、
猗尼渠餘國の隣に王たる成都穎が遮須夷國の主に供物を奉げる。
北斗の三星はいずれも等しく、
すでに賢郎との婚を許し、ふたたび三世の誓いを改めん。
▼『後傳』には「猗尼渠餘國,鄰王成都穎。簡奉遮須主,攝提專相等。當念洛陽善,過我一結軫。已許賢郎婚,再訂三生盟」と作る。これより見て、猗尼渠餘國の王は死後の
劉聰は詩の意味を解すると、愕いて言った。
「そうであるならば、劉約の言葉に応じている。朕が劉約に仔細を問うよりあるまい」
息を吹き返した劉約は、長らく死んでいたようにはとても見えず、宮の内外に愕かない者がない。謁見して見聞きしたところを語れば、劉聰は嘆息して言う。
「その言葉の通りであれば、朕らは来世も高貴の身を約束されているようなものだ。禍を免れて命を終えるならば、
「幽冥の境は
「劉約の言が茫漠としているとしても、皮嚢と玉簡はどうしてここにあるのか。これこそがその証であろう」
これより、劉聰は諌めも聞かずに終日を飲宴して送り、大小の政事は
後宮の
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