第十八回 王敦は王稜と王如を害す
晋では
「王敦は勢威に驕って朝廷を軽んじておる。後日、必ずや不道をなすであろう。卿は兄をどのように観ているか」
「王敦は臣の
晋帝はその言に従い、王澄と王稜を桂陽と長沙に遣わした。
王敦はこれを知ると、
「王澄は清談を好んで政事に通じてはおりません。この者に大郡を委ねれば、必ずや国家を誤って士民に害をなしましょう。先に
▼「参軍内史」という官は晋代に存在しない。「参軍」は官署の一部署を統べる官、内史は封国における郡太守と考えればよい。
さらに、人を遣って長江を溯上する王澄を迎え、駅の宿舎に引き入れさせる。王敦の使人は身分を偽って
王澄が言う。
「吾は陛下のご命令を受けて赴任するのだ。その詔はどこから出たものか」
「朝廷では、賢兄が酒に耽って職務を怠り、杜弢が叛乱すれば任を捨てて
王敦はそう言うと、王澄を自室に引き取らせた。その夜、何者かが就寝中の王澄を
※
王敦は王澄の屍を納め、追って到着した王稜とともに葬る。王稜は王敦の差し金と覚ったものの、何も言えなかった。
「賢弟は勅命を受けて長沙に赴任されると聞く。兄は罪を畏れて
王敦がそう言うと、王稜は逆らわず桂陽に向かった。桂陽に入ると、王敦に害されるかと懼れ、密かに兵を募って備えを設ける。そこにある者が言う。
「漢の
王稜はそれを聞くと、王如の許に人を遣わした。王如は王稜の招きを喜び、桂陽に身を投じた。王如を招いたことが王敦の疑いを惹くかと懼れ、
王稜は王如の
この頃、江南の将兵は武芸に優れておらず、王如の前で刀鎗や弓の術を披露した者はいずれも法に則していなかった。王如は進み出て言う。
「
王敦が許すと、王如は講武場に出て射術を披露する。居並ぶ将兵にはその技に及ぶ者はいなかった。王敦の麾下にある諸将は面白くなく、王如と武芸の優劣を競ったものの勝つ者がない。王敦はその驍勇を知ると、王如が王稜の麾下にあることを不快に感じた。
王稜はそれを覚り、桂陽に帰ると王如を二十回ほども杖で打って戒める。
「漢の将軍として英雄を讃えられた吾がこのように辱められるとは。勝負に勝つことを愧じるなど聞いたこともないわ」
王如は深く王稜を怨んだ。
この時、王敦は不臣の心を懐いており、
王如が王稜を怨んでいると聞くと、密かに人を遣わして王稜を殺せば桂陽の太守に任用すると唆す。王如は計略であるとは知らず、その勧めに応じた。
ある日、王稜が酒を呑んでいると、王如が
「王如が何ゆえに吾が弟を害したのか」
王敦は愕いたふりをしてそう言うと、事情を聞くために王如を武昌に召し出した。王如は疑いもせずに武昌に到り、すぐさま捕縛される。弁明したものの容れられず、ついに斬刑に処せられた。
王敦は一計により二人の敵を除いたことであった。
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