26話目 幼なじみと本当の気持ち

「僕の妹に、なんか用?」


「りゅ、隆都...?」


驚くわたしをよそに隆都は「ちょっと待ってて」と笑顔で言うと男性達に向き直った。


「で。僕の妹になんの用?」


その顔からは笑顔が消え恐怖すら感じるような覇気があった。


「え?なに、お兄ちゃん?‪w可愛い顔してるねー、君も俺らと遊ぶーイテテテテ!!」


隆都に伸ばされた手はいつの間にか反対側へと捻らされていた。


「あんまりしつこくしないで。めぐるがいるんだから。」


掴んでいた腕を払い男を跳ね飛ばした隆都がチラリとこちらを見た瞬間


「このガキ...言わせておけば!!」


という言葉と共にその場にいたもう1人の拳が隆都めがけて飛んでいく。


「隆都!!」


それもつかの間、気づけば男は拳を突き上げたままプルプルと静止し、そのままその場に倒れるように崩れ落ちた。


何が起きたのかわからず目を瞬かせているとようやく起き上がってきた男性が


「お、おい、やばいって、...あいつ、南高の...」


と何かを呟き2人の顔が青ざめる。

隆都は「ふー」と深い溜息をつくと


「わかったなら、さっさとどっかいってよ。」


と笑顔で言い放った。

それを見た男達は逃げ出すようにその場から居なくなった。


突如、重たい空気と沈黙が訪れる。


耐えきれずわたしが「りゅ、隆都...?」と声をかけると彼は何事も無かったかのようにいつものあどけない笑顔で「大丈夫?怪我してない?」と聞き返してきた。


「え、あ、うん。大丈夫...ありがと、助けてくれて...」


一瞬、彼の笑顔に感じた違和感のようなものはわたしの気の所為だったのかもしれない。

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幼なじみと不器用なわたし @Lich_Jun

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