第6話 神界
無能は目を覚ました。
がば、と起き上がる。
「ペインは!?」
俺は辺りを見回す。
近くに崩れ落ちたペインの残骸があった。
「やったのか・・・」
そこで無能はふと気付く。
「傷。背中の傷は・・・?」
背中に痛みはない。血のりは付いているが傷は塞がってるようだ。
「です代が治してくれたのか、ありがとうな、です代・・・ってあれ?」
周囲にです代の姿はない。
「です代?おい、どこ行ったんだ?」
すると正面に光の粒が集まる。
光の中から現れたのは女のひとだった。
「・・・女神?」
それは聖女ともいうべきオーラを放つ、見目麗しい女のひとだった。胸もちゃんとある。
「初めまして無能様」
「あんたは?」
「私は輪廻(りんね)、です代の上司の女神です」
俺は疑問を口にする。
「です代は?」
輪廻は悲しそうに目を伏せ、
「神界に連れ戻されました」
無能は問い返す。
「連れ戻された?帰ったんじゃなくてか?」
輪廻は頷く。
「無能様、背中の傷は覚えていますか?」
「ああ。です代が治したんだろ?」
女神は無能を見据え、
「それは切り傷だけではなくウィルスによる攻撃でもあったのです」
輪廻は続ける。
「です代の治癒の力ではウィルスは駆除できません。ですからです代は禁を犯したのです」
「禁?」
女神は頷く。
「です代は時の秘法を解除し、己の血液を無能様の体内に流したのです」
俺は息をのむ。
「それによって無能様の体内に侵食したウィルスは駆逐出来ました。しかし」
輪廻は悲しそうにこちらを見つめ、
「あなたの中には半分、神々の血が宿ってしまったのです」
女神は俺の手を取る。
「人間を半神半人にするのは神界において禁忌事項。です代は禁を犯した者として、神界で罰を受けるのです」
「罰?」
「はい。罰は二つあります一つは人間界への出入り禁止。もう一つは無能様の代わりに人間にされ、『世界の痛み』を引き受けるという罰です」
無能は堪らず叫ぶ。
「なんだって!?」
俺は女神に言い寄る。
「世界の痛みを引き受けるのは世界に選ばれた人間だけじゃなかったのか!?」
女神は無能を見据え、
「神界の最奥に世界の法則にアクセスできる場所があるのです」
輪廻は憂いた瞳で無能に尋ねる。
「無能様。貴方はどうなさいますか?」
無能は迷わず、
「俺を神界に連れて行ってくれ!」
輪廻は微笑み、
「それでこそ『世界の痛み』に選ばれた者です」
女神は両腕を掲げ、門を開く。
「正面口は門番がいますので、非常口を開きます」
光が集まり、門が出来る。
「これをお持ちください。姿、気配を隠せます。あと、いくつかアドバイスを」
俺は姿気配隠しの護符を受け取り、アドバイスを受ける。
「あんたは大丈夫なのか?」
無能が聞くと、
「大丈夫です。私は非常口のメンテナンスをするだけなので。護符はなくしましたと」
無能は笑い、光の門に入る。
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