第34話 もぐらの涙

 内緒だと父渡したる万札を 

      隠す手すでに 母からの札


「お母さんには内緒だぞ。甘やかしてると怒られる」 父がこっそりお金をくれる。実家に帰ると、必ずおこづかいといっては小さく折り畳んだ一万円をもらう。いらないと言っても、貰って困るものじゃないと強引に渡される。


私は左手を隠し、右手で受け取る。1分前に台所で母からも同じ状態の一万円を

受け取っているのだ。

「お父さんには内緒だから」たまには洋服でも買いなさいとお金をくれる。


年金生活で決して裕福ではないだろうし、老後の蓄えは必要だろうに。


その後、私の好きな煮物や焼き魚をたくさん食べさせてくれる。


帰る頃は昔の父と母をすっかり忘れて体に気をつけてねを繰り返す私。

ずっと見送る父と母。小さく折り畳んだ一万円札を広げる時、

涙が止まらなくなる。


もぐらの泪が感謝の涙にかわる。


              




 幼少期の毒吐きに付き合って下さり、読んで下さったことに感謝申し上げます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もぐらの泪 星都ハナス @hanasu-hosito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ