柏座陽奈II
早くも新入生歓迎会が行われてから五日が経ちました。
私はあの日以降、どうしたら小敷谷君と今泉さんをくっつけられるか考えていましたが、どうにも中途半端な案しか浮かびませんでした。せっかくサポートすると小敷谷君に言ったのに、これでは役立たずです。私は自分の不甲斐なさに落胆していました。
しかし、転機は訪れました。昨日のとある件でついに、しっくりとくる案が思いついたのです。だが、この案では最低でも二人以上の協力が必要です。そこで今日、向山君と平方さんには放課後の部室に秘密裏に集まってもらいました。
「で、結局私たちは何をすればいいのよ?」
一通りの経緯を説明したあと、平方さんが訊いてきました。私は本題を出すことにしました。
「えっと……今度、お二人さんで一緒に行動してください」
「……はぁ?」
二人の息が揃います。
「一緒に行動するって……俺と平方さんでか?」
「はいっ! そうです」
「そうですって……突拍子もなくそう言われてもなぁ。てか、今度っていつの話だし……」
「そうですね……。だいぶ説明を省いてしまいました。先ずはここから話しましょう。もしかしたら、文芸部の向山君はまだ聞いていないかも知れませんが、新聞部では昨日、今度のゴールデンウィークで校外取材に行くと副部長さんから知らされました」
「校外取材……?」
向山君はまだ知らされていないようです。
「はい、まあ校外取材と言っても今回は、実質的な新入生歓迎旅行だそうで、毎年新聞部と文芸部の合同で近場の観光をするとのことです」
「それで……?」
「つまり、この旅行は小敷谷君と今泉さんが付き合う絶好のチャンスなんです。ただ、小敷谷君はどうも奥手なようで……」
「まあ、確かにな」
「そこで、自然に二人っきりの状態にする。そこで、向山君と平方さんには今度の校外取材で一緒に行動して欲しい。それが私の提案です」
すると、向山君は少し訝しげな目でこちらを見てきます。
「それでどうして、俺たちが一緒に行動する事になるのか、さっぱりわからないのだが?」
「……えっとですね、さすがに小敷谷君と今泉さん以外のみんなが一緒に行動しているとお膳立てをしているのがバレるじゃないですか?」
「まあ……そうかもな」
「そこで私たちも何人かで別々になる事によって、自然に二人っきりにするのです」
すると今度は平方さんが尋ねてきました。
「ちょっと待って、それじゃあなんで私と向山君の二人じゃなきゃダメなの? 別々になるだけだったら、柏座さんも一緒でもいいじゃない」
「確かにそうかも知れません。でも、そしたら新入生から二人だけ省いているみたいじゃないですか」
「いや、実際省いているだろ」
今度は向山君がそうツッコミます。
「まあ……とにかく、何か勘付かれて失敗ないようにするために、お二人には今度の校外取材め一緒に行動して欲しいんです」
すると平方さんは何か諦めたような顔をします。
「うーん、まあもういいやぁ私。色々とツッコミたい所はあるけどぉ……今回はあんたに任せるわ」
「ありがとうございます! えっとじゃあ向山君はどうですか?」
「……まあ、俺もあの二人のことをくっつけたいという点では同じだからな……。それに平方さんが良いって言うんだし俺も良いかな。ただ、ひとつ訊かせてくれ、柏座さんは誰と行動するのさ?」
「それは勿論、二人の後を追うんです」
こうして校外取材が始まりまるのです。
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