第7話 『ミステリー・ゾーン』と娘の苦手
年末年始は、我が家に『ミステリー・ゾーン』のDVDを持ち帰り、じっくり鑑賞した。名作揃いのシリーズ中でも特に傑作が集まっている第三シーズン。「到着」「生と死の世界」「遠い道」「栄光の報酬」「鏡」「墓」「子供の世界」「亡霊裁判」「狂った太陽」である。
だが、やはり妻と娘は見てくれなかった。駄作だから観ないというならまだ話は分かる。でも『ミステリー・ゾーン』だぞ?
この番組の魅力については、前に『世にも不思議な怪奇ドラマの世界』という本の中で論じたことがある。現代の目で見ても素晴らしい脚本の数々。ロッド・サーリングはまぎれもなく世界最高の脚本家だ。僕が高校の頃に再放送で見た「到着」や「生と死の世界」や「子供の世界」のすごさに舌を巻いた。現代でもこれを上回る脚本を書ける脚本家が何人いるか。
特に素晴らしいのは「狂った太陽」。最近は「二つの太陽」という題になってるそうだ。(「狂った」がNGらしい)
http://www.superdramatv.com/line/mistery/episode/detail3-10.html
すごいのは今のようにCGも使わず、派手な特撮なんか何もやってないのに、地球の滅亡というスケールの大きいドラマを描ききったこと! しかも登場人物はほんの数人で、舞台はアパートの一室からほとんど出ないのに!
僕がドラマ版『MM9』を批判したのもそれが理由だ。「特撮なんか使わなくても、予算がなくても、シナリオさえ良ければいいドラマは創れるってことだ。だから予算の制約は言い訳にはならない」と。
カクヨム「藤澤さくらの憂鬱」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881227899/episodes/1177354054881228060
僕の『トワイライト・テールズ』は『ミステリー・ゾーン』に大きな影響を受けている。タイトルからして『トワイライト・ゾーン』(原題)からのインスパイアだし、オチの付け方もサーリングに習った。また、「ミラー・ガール」(『アイの物語』に収録)は第三シーズンの「ロボットの歌」にヒントを得たものである。
だから、ぜひ見て欲しかったんがなあ……。
今回、娘と話をしてみた。いったい『ミステリー・ゾーン』のどこがダメなのかと。
娘が言うには「こわいのが嫌」なんだそうだ。「人が死ぬのなんて耐えられへん」と。娘はすごいこわがりなんである。
いや、『ミステリー・ゾーン』って人が死ぬ話も、バッドエンドの話もあることはあるけど、全部が全部そういう話じゃないんだけど。
母親がよく見ている刑事ドラマもそうで、娘は絶対に死体の出るシーンは見ようとしないのだ。
自分の娘が心優しい子に育ってくれたのは嬉しいけど、ちょっとメンタルが弱すぎるんじゃないかと、かえって心配になる。
「じゃあ『ライダー』は?」と聞いてみる。この前も新しい『仮面ライダー』の映画見に行ってたよね?
娘の話では、最近の特撮ものはあまり人が死なないので平気らしい。そりゃあ『シン・ゴジラ』を見ないわけだ。
さらに、以前から疑問に思ってたことを訊ねてみた。
「『銀河英雄伝説』は?
答えは予想通り。
「人が死ぬから嫌」
ああ、そうだね、いっぱい死ぬよね、『銀英伝』は!(笑)
もちろん、そんな特殊事情があるのは娘だけの話で、昨今の若い女性にとっては普通に人気があるらしい。良かった。今の若者に『銀英伝』に人気がないとか言ったら、日本の未来は真っ暗だ(笑)。
もっとも女性ファン間では、「次に誰が死ぬか」という話題には箝口令が敷かれているのだそうだ。ああ、当然だね。「次に××××××が死ぬ」なんて話はしたくないよね。
ところで、こんな話をしているうちに、娘と普段しない話をしてみた。僕が言い出したのではない。娘の方から持ち出したのだ。
『去年はいい年になるだろう』の話を。
この小説の初版は2010年4月。翌年のSF大会で念願の星雲賞を獲得した。
でも僕は家庭内でこの小説のことを話題にしたことはない。
だから娘の話を聞いたのも、昨日がはじめてだった。
あのシーンで娘は大きなショックを受けたらしい。幸い、僕が妻や娘を嫌っていると思いはしなかったけど、僕に対する不審の念は植え付けられたのではないかと思う。
つまり、『ミステリー・ゾーン』に対する恐怖心も、それに由来するのではないか。僕が関心を抱くすべてのものに対する恐怖。
さて、どうしたもんやら。
とりあえず『ミステリー・ゾーン』でも誰も死なないしこわくもない話から見せてみようか。「弱き者の聖夜」か「8時間の奇蹟」あたりから。
あと、僕の小説もこわくはないことを教えたいんだけと、自分の小説で人が死なないのって、『BISビブリオバトル部』の他には『夏葉と宇宙へ三週間』ぐらいなんだよな……、
ごめん、やっぱりパパ、こわい小説しか書けないみたい。
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