この小説は『異世界転移をする側』と『異世界転移を受け入れる側』にそれぞれ主人公が存在するダブルキャスト作品です。
間違いなく異世界転移をするのですが、いわゆる、『ラノベ的な都合のよい異世界転移』ではありません。
かといって絶望的に救いがないわけでもない。
そのあたりのさじ加減がとても絶妙だと思いました。
ファンタジーの中にもリアリティを求める人は、特にこの作品を「面白い」と思うでしょう。
ファンタジーだからこそ必要なリアリティが小難しくならないように洗練されていて、そのおかげでそこには確かに『本当のファンタジー』がありました。
物語の中で、しっかりと主人公が成長していくのも素晴らしいなと思いました。
さらに、その主人公の成長とともに、周りも気付かされるというのがいい。
最初はダメダメだった主人公が、周りを見返すほどに成長すると言うところにカタルシスを感じました。
そして、あの結末……。
——よい読後感でした。
2万文字近い分量であるにも関わらずスッと読み切れたのは、この作品が徹頭徹尾理路整然としていたからです。
ロジカルなファンタジー。どうか一度、手に取ってみてください。