第13話
「まぁ、あいつの給食に毒入れたりすればできるだろうけどさ、私そういうのはパス」
「いや……そんな殺すとかはしないけどさ。理想としてはババ先を学校から追い出すのが一番じゃねぇかな」
敷島がそう言うと、それまで沈黙を守っていた市原が口を開く。
「……できるかな? そんな事」
「それを目標にして作戦考えんだよ」
「だってさ、先生を学校から追い出すなんて絶対難しいよ。先生の悪事を暴いて公表するとか、よっぽど凄い嫌がらせとかしないと……」
確かに市原の言う通りであった。学校を職場として居着いている大人を学校から追い出すというのはかなり難しいであろう。そして現実的な手段としては市原の述べた二択である。
「まぁ、そのどちらかでやるとすれば前者かな。後者だとやる事がババ先と同じになっちゃうしさ」
そう言ったのは西之原だ。敷島がそれに反論する。
「クリーンな手段を選ぶか? 相手はこれまで散々やってくれたんだぞ?」
「気持ちはわかるけど、俺はできればあいつと同類にはなりたくない。もし嫌がらせであいつを追い出すって言うなら俺は降りるよ」
西之原の言葉に満を除く四人が同意する。
「それに、リスクってもんがあるだろ。里中を追い出すくらいの嫌がらせをするって事は、何日もかけてハードな嫌がらせを繰り返さなきゃいけないわけだろ? そしたら俺達がやったってバレるだろうし、反撃も喰らうわけだ。もしあいつが学校から出て行かなきゃ来年まで地獄だぞ」
「確かに……そうだな」
「それよりはあいつの悪事の証拠を集めて、教育委員会にでも直談判すれば大人達が解決してくれるってわけだ」
「なるほどなぁ。ニッシーはやっぱ頭いいな。よし! それでいくか!」
しかし、松村はイマイチピンとこないようで、首を傾げている。
「でもー、大人達がどうにかしてくれるかなぁ。前に佐々木さんの親が学校に怒鳴り込んだらしいけどどうにもならなかったよね?」
「それは証拠が無かったからだろ? 真瀬田、お前スマホ持ってただろ? それであいつの悪事を盗み撮りすれば良いんだよ」
真瀬田はサイドバックからスマホを取り出すと、カメラを起動して敷島の顔をパシャりと撮った。
「何すんだよ!」
「ヤダ、バレたら没収されるじゃん。スマホ使えなくなるとかありえないし。ネットできなくなるしさ」
すると、西之原が興奮したように真瀬田を指差す。
「それだ!」
「は? 何?」
「撮影手段はともかくとして、大人達が何もしてくれない時は最悪ネットに流せばいいんだよ! そしたら炎上して、大人達も絶対動く! これなら作戦も盤石だよ!」
そのアイディアに一同から感嘆の声が上がった。
彼らの動くべき方向性が徐々に見えてきたようだ。
「よし、じゃあみんな、各自家にある録画や録音できるものを探してみてくれ。またすぐに作戦会議を開くぞ! それでは今日は解散!」
敷島の号令で、その日の決起集会はお開きとなった。そして運動公園からの帰り道、敷島は満に尋ねた。
「なぁ、みっちゃん。今日ニッシーの方がリーダーっぽくなかった?」
「……うん」
満の返答に、敷島はがっくりと肩を落とした。
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