子供達の反撃
第12話
翌日の放課後、松木小学校から程近い松木運動公園の一角には、満と敷島を含む六人の子供達が集まっていた。それは今日、敷島が学校で声を掛けた里中への反抗心を持つ五年一組の生徒達であった。
集まったメンバーは、昨日打倒里中を決意した
敷島に協力を約束した
クラスのお調子者だが、里中によく目を付けられる
スポーツが得意で、敷島とよくサッカーをしている
以前は女子の中心にいたが、里中に反抗的な態度を取るために周りから敬遠されるようになった
そして、真瀬田に付き従うようにいつも一緒にいる
彼らは全員が以前から特別仲が良かったというわけではなかったが、敷島の抱く「打倒里中」の志の元に集ったのだ。
「みんな、よく来てくれたな」
そう言って敷島は誇らしげにメンバーを見渡す。
腕を組み偉そうにするその姿は、まるで一軍の将のようであった。
「みんなに今日集まって貰ったのは他でもない。あの悪魔ババ先を倒して、平和な学校生活を取り戻すための決起集会を行うためだ」
「よっ! リュウセイカッコいい!」
敷島の語りに松村がすかさずヨイショを入れる。
「あいつが来てから俺達の学校生活はめちゃくちゃだ。みんなビクビクしてて、何やってても楽しくない。俺は来年の四月までこんな学校生活を続けるのは嫌だ」
「うん。俺もそう思う。俺は別に厳しい先生って嫌いじゃないけど、ババ先は明らかにやり過ぎだ。昨日の帰りの会なんてマジで最悪だろ」
そう言ったのは、昨日敷島と共に里中に吊るし上げられた西之原だ。
「そうだニッシー! あいつは俺達が子供だからって好き勝手やってる最悪な奴だ! 俺達であいつを倒すんだ!」
そこで、真瀬田が口を挟む。
「でさ、倒すってどうすんの?」
「え?」
真瀬田の言葉に敷島はフリーズする。
「まぁ、私もあいつが気にくわないからここに来たわけだけどさ、倒すって漠然と言われてもよく分からないじゃん? ごっこ遊びしたいんだったら私達帰るよ?」
「いや、待てよ! それも含めてみんなで考えようって事だ」
「それってアンタ一人じゃ何も考えつかないから私達に頼るって事じゃないの? そんなアンタが何でリーダーぶってるの?」
「はぁ!? 俺が声掛けなかったらお前らがこうして集まる事なかっただろ!? 何もしないで来年までババ先にいびられたかったのかよ!?」
前の学年でも、男子と女子のリーダーだったこの二人は、よくこうやって衝突する事があった。満はその様子を懐かしく思った。そこに西之原が割って入る。
「待て待て、喧嘩すんなって。俺はこうしてみんなが集まっただけでも意味があると思うよ。サッカーでもそうだけどさ、一人でボール持って突っ走るより、仲間とパス回しながら上がった方が戦略も広がるしさ」
「何? つまりどういう事よ?」
「やれる事が増えるし、勝率が上がるって事」
そう、単純な事ではあるが、数が力になるという事を少年団でサッカーをやっている西之原はよくわかっていた。
「そう、ニッシーの言う通りだ!」
「まぁ、それはわかるけどさ、それはみんなで一つの目標に向かって行動した場合じゃん? 敷島は倒す倒すって言ってるけど、その倒すの定義を言ってくれないと作戦考えようも無いよね?」
真瀬田に同意するように市原もコクコクと頷く。
「倒すって何? あいつを殺すの?」
真瀬田の発した「殺す」という単語に、場の空気が凍った。
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