落ちなし意味なし道中小話 みんな何才?

 ※ 2幕で年齢の話題がチラッと出たのに触れるの忘れてたので別に書きました。カバー裏マンガ的な気分でご覧ください。



 ヒルデと別れ、谷を後にし、橋を越え山を越え、近場の街へと宵虎が歩んでいるその差中―。


「そう言えばさ~。お兄さんって何歳かな?」


 宵虎の背中に飛び乗りしがみついているアイシャは、突然そんな事を言い出した。

 その声に答えたのは、どこかだらけた様に宵虎の頭に乗っている黒猫だ。


「にゃ?……そうだにゃ~。にじゅう………28と見たにゃ」


 背中と頭……頭上の会話に、宵虎は唸るように呟いた。


「28?………なんの話だ」


 ネロの言葉しか理解出来ない以上、なんの話か、宵虎にはわからなかったのである。

 そんな宵虎を置いたままに、一切自分で歩く気のない少女と猫は、どこかダラダラと話を続けた。


「え~。そんなには、行ってないでしょ。24とか、25とかじゃないの?」

「まあ、見た目的にはその位だけど~。でも、マスターが前言ってたにゃ。東の方の人って、みんな若作りらしいって。だから、見た目より上じゃないかにゃ?」

「若作り?見た目より上?…………ああ。年の話か」


 そのネロの呟きで、漸く宵虎も理解する。

 どうやら、宵虎の年齢の話をしているらしいと。


 ならば、そのうち尋ねられるだろう。

 そんな風に考えた宵虎の頭上で、だらけた会話は続いていく。


「え、そうなの?……じゃあ、意外と30超えてたりするのかな……」

「あり得るにゃ~。落ち着いてるって言えば落ち着いてるしにゃ~。冷静にあほな事になってるからにゃ~。ていうか、そう言うアイシャは幾つだにゃ?」

「……俺には、聞かないのか……」


 どうも矛先が自分から外れたらしいと、宵虎は低い声で唸った。

 そんな宵虎の頭上で、会話は続いていた。


「私?私は……17.5」

「.5って……詳細なのか雑なのかわかんないにゃ……」

「………てんご?とは?異国は年の数え方が違うのか?」


 宵虎はそう呟いた。ネロの言葉から判断すれば、今、アイシャは年齢を答えたのだろうが……詳細なのか雑なのかわからないらしい”てんご”という言葉の意味が宵虎にはわからない。


 色々と良く分かっていない宵虎の頭上で話は続く。


「だから~、17才と半分位?」

「なぜ疑問形なんだにゃ……。まあ、って事は、マスターの方が年上なんだにゃ」

「へ~。そうなの?」

「そうだにゃ。マスターは20前後って言ってたにゃ」

「前後?ネロ~、ご主人様の年齢知らないの?ペットなのに?」

「使い魔だにゃ。そう言われてもにゃ~。だって、20前後としか言わないしにゃ。あたしが使い魔になった時からずっとにゃ~」

「へ~。あれ?……待って。……それ、何年前の話?」


 何かに気付いた、と言いたげなアイシャ。

 答えながら、ネロもアイシャが何を言いたいのかに気付いた。


「えっと~、…………4年前位だにゃ」

「4年間、ずっと?」

「20前後だにゃ」

「……って事は、今……キルケー、26とか?」

「いやいや、なんでそうなるにゃ。前後って事は、最初に言った時十代だった可能性もあるにゃ」

「いや~、ぼかしたら絶対少なめに言ってるでしょ。20前後って最初に言った時、絶対22だって」


 ちなみにネロを使い魔とした当時、キルケーは17才だ。初めて使い魔を従える時点で、若過ぎたら舐められると思って、大分広い意味で20前後と言ったのだ。


 つまり、4年経った現在、キルケーは21才。

 だが、アイシャもネロも、ついでに宵虎も、それを知る由はない。


「そうかにゃ~?まあでも、見た目あんまり変わってないしにゃ……。マスター、26才だったのかにゃ…。20前後、にゃ……」


 若干遠い目をしながら、ネロは呟いた。


「26?前後の範囲が広過ぎないか……」


 そんな風に唸った宵虎の背中で、アイシャもまた言う。


「26か~。まあ、だからなんだって話だけど」

「そうだにゃ~。別に26歳だろうとマスターはマスターだしにゃ~。例え40代だったとしても、だんにゃはだんにゃだしにゃ~」


 急に話の矛先が戻され……宵虎は若干俯いた。


「……40代?俺は……そこまで老けているのか………」

「あれ?お兄さん、しょげっちゃった。……流石に四十はショックだったんじゃない?」

「にゃ~。じゃあ、32とかかにゃ?」

「……23だ」


 ポツリと、宵虎は唸る。

 その声を聞いたネロは、呆れたような視線を宵虎に向けた。


「にゃ?だんにゃ~、何と勘違いしてるのかわかんないけど~、あたしたちは今、だんにゃが生まれてから何年経ったのかにゃ~、って話をしてるにゃ」


 ネロの大変わかりやすく舐め切った言い方に、宵虎は顔をしかめ、唸った。


「23年だと言っているんだが?」


 そんな宵虎へと、無駄に真剣に疑う様な視線を向けながら、ネロは言った。


「…………本気で言ってるのかにゃ?」

「……こっちの台詞だ」


 若干睨み合う様な雰囲気の宵虎とネロ……。

 そんな二人を眺めながら、アイシャはネロに尋ねた。


「ね~、ネロ。なに?お兄さん、なんだって?」

「だんにゃは23才だと主張してるにゃ」

「……主張ではなく、事実なんだが……」


 文句がありそうな様子で唸った宵虎を眺めながら、アイシャは呟く。


「23か~。私割と近かったじゃん。……って事は、5.5才差…」

「なぜそこまで.5にこだわるにゃ」

「てんご……」


 唸るように呟く宵虎、その背中で、アイシャは更に呟く。


「…う~ん………やっぱり、妹扱いかな~。まあ、暫くはそれでも良いけど」

「てんご……数字なのか?」


 思い思いに、宵虎とアイシャは呟き続ける……。


「お兄さん、23か~」

「てんご、才?とは?……結局何歳だ?」


 そんな二人に、ネロは不意に呆れたような視線を向け、ため息の様な声で言った。


「………なんか、つまんない駄洒落に聞こえて来たからもうこの話題止めるにゃ」

「「……駄洒落?」」


 メタい領域に片足を突っ込みつつあるネロの呟きに、宵虎とアイシャは同時に首を傾げた。

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