暗がりの先の魔物2

 巨大な爪が、重く鋭く、振り下ろされる―。


 背後へと跳び、身を躱したアイシャの眼前を爪が薙ぎ、地面を抉り取る。

 飛び散る破片の差中、アイシャはひるまず弓を引き、それをガーゴイルへと向けた。


 どうにか反撃しよう――そう考えていたアイシャは、しかし咄嗟に言霊を切り替えた。


「ラピッド………ッ、バースト!」


 放たれた矢は直後に炸裂し、至近距離での暴風がアイシャ自身を高くへと吹き飛ばした。

 直後、鞭の様にしなやかな石の尾が、地を擦りながらアイシャの眼下を薙いでいく。


 半身に回転し、ガーゴイルがその尾を振り回したのだ。


 石でできた巨体の割に、ガーゴイルの動きは酷く素早かった。

 絶え間なく襲い来る爪、尾を前に、反撃の隙を見つけ出せない程に。


 ……けれど、見つけ出せないなら無理矢理作れば良い。


「バースト!」


 未だ空中に身を置きながら、アイシャはまた自身を吹き飛ばす。


 薙ぎ払われた爪が引き裂いたのはアイシャの影のみ――自身を吹き飛ばし、無理矢理に距離を取ったアイシャは、半ば転がる様に着地し、体勢を整えると同時に弓を引く。


「ラピッド・ブロウ!」


 膝立ち、雑な狙いのまま放たれた矢は、ガーゴイルの胴体に当たり、その体に僅かに傷を付ける。

 だが、僅かに砕けたその傷は、ほんの一瞬で元通りに塞がれた。


「……チッ、」


 苛立ちを隠す様子もなく舌打ちしたアイシャへと、ガーゴイルは正面から距離を詰めて来る。


 ダメージを与えるためには、渾身で放たなければならない。が、連撃を前にもはや詠唱を絡める隙はなく、それに渾身の一矢を当てたとしても、今の様にすぐに再生されてしまう。


 引き際だ。間違いない。一旦退いて体勢を立て直し、このガーゴイルを倒すための情報収集に努めるべき。


 あるいは、前に同じような判断をしたからこそ、……オーランドは一切手出しせず、アイシャの戦いを見物しているのだろう。


「そう言う怪物は面倒だよな、アイシャ。人やただの生き物なら、切れば死ぬ。だが、そう言う奴には大抵ルールがついてくる。弱点だとか、有効な攻撃だとか」


 ガーゴイルの攻撃から身をかわし続けるアイシャへと、腕を組み壁に寄り掛かったオーランドは好きに声を投げてきた。


「浪費を避けて効率良くやるためには、教材か教訓が必要だ。残念ながら教材は得難い。だから、教訓を得ようと思ったんだが………集めた奴は驚くほど腰抜けばかりでね。その点、君には期待してる。さあ、そいつの殺し方を俺に教えてくれ」


 オーランドは、アイシャをにするつもりなのだ。情報収集のための人身御供、倒せたらよし。倒せずとも有効な攻略法を見つけられたらそれでも良い。


 とにかく、オーランドはアイシャを利用する気でここに連れて来たのだ。

 最も、そんな事はアイシャにも元々わかっていたが……無視して逃げ出した場合、今度は敵がオーランドとヒッポグリフに変わる。いや、そもそも現時点で敵対しているようなモノか……。


「めんどくさい……」


 苛立ちのまま呟いて、直後身を躱したアイシャの影を、ガーゴイルが薙ぎ払う―。


 めんどくさい………アイシャの胸中にはそんな苛立ちばかりが募っていた。


 他人の思惑だとか、この場所の事情だとか、そんなモノには一切興味がない。

 最短で、効率良く、でこのめんどくさい状況を解消するために、アイシャはあえてオーランドに利用される事にしたのだ。


 だから………思惑を推測するのはいったん止めて、目の前の怪物を倒してしまおう。それが、一番シンプルな解決策のはずだ。


 苛立ちをどうにか押さえ込み、アイシャは漸く、ガーゴイルの動きへと集中した。


 爪が、尾が薙ぎ払われる――一々大振りだが素早く巨大なそれは、避けるだけで一苦労だ。

 だが、逆に言えば、ガーゴイルはこれまでそれしかして来ていない。さっき力づくで距離を取った一瞬には、確かに反撃する隙があった。


 そもそも、アイシャは弓兵だ。身のこなしが軽いからこそ、近間でもある程度立ち回れるが、距離を取って一方的に攻撃するのが正しい戦術である。


 決めた直後に、アイシャは動いた。バックステップを踏み、直後、言霊と共に矢を放つ。


「ラピッド・バースト」


 アイシャは自身を背後へ吹き飛ばす――振り回されたガーゴイルの尾が鼻先を掠めるが、しかしアイシャに当たる事はない。


 一瞬で距離を取ったアイシャは、そのまましなやかに着地した。

 このにもいい加減慣れて来た。上へと跳んでの着地は難易度が高いが、真横へなら、ただ飛距離が長いだけのステップの様なものだ。


 着地の勢いに僅かに後方へと滑りながら、アイシャは弓を引く。

 体勢の立て直しに手間取らなかった分、今度は一瞬であれ狙う間がある。


 問題はどこを狙うか。どこが弱点かだが………それがわからないなら、一通りを射貫いてみれば良い。


「ラピッド・レイン!」


 声と共に放たれた矢は、直後、幾つにも枝分かれしていく。

 威力は低い。貫くまで至るはずもなく、せいぜい僅かにひっかき傷を付ける程度が関の山だろう。

 ただ、弱点を見つけるには、僅かな傷だけで十分――。


 放たれ、拡散する不可視の矢。何条ものモノ風の礫がガーゴイルへと殺到し、その体に傷を付けていく―。

 羽を、爪を、足を、尾を、胴を…………矢は襲い、僅かな傷を付け、だが直後その傷は一瞬で再生した。


 ただ一か所――頭部についた僅かな傷を除いて。

 明らかに質感の違う滑らかな頭部の一角。僅かに掛けたそこだけが再生せず、どころか血のような黒い液体を滴らせてもいた。


「……頭か。なんだ、見たままなのか」


 どこかつまらなそうに、オーランドは呟く。


 その程度すら自身で確かめようとせず、アイシャを利用していたらしい。可能ならどこまでも自身の労力を割く事を厭うようだ。

 どうあれ、……頭を潰せばそれで終わりのようだ。


 倒し方がわかったならこれ以上の手間は十分と、アイシャは再度弓を引き、そこで僅かに眉をひそめた。


 さっきまで愚直に距離を詰めて来ていたはずのガーゴイルが、今は動きを止めている。


 弱点に傷を負った為に、動きが止まったのか。

 注視するアイシャの視線の先で、不意にガーゴイルが大口を広げる。


 肌がざわつくような、濁った音が僅かに聞こえて来る――。

 見覚えのある動作だ。ガーゴイルではなく、スキュラがそんな呼び動作をしていた…。


「バースト!」


 思い出したと同時に、アイシャは真横へと自身を吹き飛ばす。


 ――直後、アイシャの真横を擦過したのは、濁流だ。黒く濁った水――凄まじい速度、圧力で放たれたそれが地面を、背後の壁を切り裂くように抉り取っていく―。


 ブレスだ。スキュラの様に閃光ではなく濁流ではあるが、紛れもなくガーゴイルの放ったブレス。


 前に一度見て、知っていたからこそ躱すことが出来た。

 けれど……脅威はブレス自体ではなかった。


 突如、アイシャは暗闇に包まれた。右を見ても左を見ても、その青い瞳には何も映らない。


 壁一面に彫り込まれていた紋章魔術――ガーゴイルのブレスがその一部を抉り取った事で、そこに込められていた術式が力を失い、広大な空間は元通りの暗がりへと戻ったのだ。


 ガーゴイルの姿どころか、手元すら見通せない……突如そんな暗がりに放り出されたアイシャの耳に、肌がざわつくような音が届く―。


「ああ、もう!」


 またも苛立ちの声を上げたまま、あてずっぽうに跳びのいたアイシャの耳に、濁流が地面を抉り取る音が響く。


 思いの外近い………どころか、さっきまでアイシャがいた場所を正確に狙っているようだ。

 この暗闇でも、ガーゴイルはアイシャの位置を把握できるのか……。


「………ッ、」


 歯噛みしてアイシャは走り出す。あてずっぽうだが、止まっているのはまずい。

 かと言ってこの暗闇ではアイシャには敵の位置もわからない。


 まずどうにか明かりを灯すのが先決――起動言語は灯れグロウだ。これだけ巨大で、かつ何年も維持されていた紋章魔術ならば、一部が欠けても再び起動する可能性もある。


 濁った音――えぐる様な音が背後から聞こえて来る―。


 壁際にいたはずのオーランドに頼るのも手だが、手助けする気ならもうしているはずだ。弱点を発見したからにはアイシャはもう用済み、そう考えてここでガーゴイルに始末させる腹積もりかもしれない。


 どうあれ、アイシャにはオーランドに頼る気は一切なかった。


 あてずっぽうで躱したせいで、壁への方向も距離もわからないが、一方向に向かって掛けていけばいずれ壁に当たるはずだ――。


 暗闇は恐怖の象徴だ。

 まして、アイシャは暗闇で追いかけまわされる事にトラウマがある。恐怖のあまり座り込む事はなかったが、それでも、突然の暗闇に、それを逃れる事に意識が傾いてしまい………周囲への注意がおろそかになっていた。


 すぐ真横に僅かな振動、濁った様な音が、いつの間にか聞こえて来ていない――。


「バースト!」


 気付くと同時に、アイシャは自身を吹き飛ばす――。


 地面を叩き、抉り取る音はすぐ間近。

 知らぬ間にガーゴイルに接近しすぎていたらしい――。


 そんな失策を後悔した一瞬が致命的だった。


 衝撃が襲う。未だ空中に留まり続けるアイシャの身を、硬い何かが思い切り打ち付けた。


 爪か、尾か、あるいは羽でも使ったのか―――その区別すらつかない。


 強烈な一撃は、アイシャを暗闇へと吹き飛ばした。


 上も下も右も左もわからない。わかるのはこのまま落ちるにせよ壁に当たるにせよ、碌な目に合わないことだけ。


 浮遊感には慣れている。着地が上手く行かない事も知っている。けれど、今どうにかしなければそれで終わりだ。


 半ば無意識に、アイシャは弓を引き、即座に放った。


「バースト……」


 やけくそに放ったのは、炸裂矢。


 出来るかもしれないと思っていた着地法、地面に当たる瞬間に、進行方向とは逆の方向に自分を吹き飛ばして相殺すれば、優雅に着地出来る可能性はある。


 試した事はない。試したくもない。だが、何もしなければここで終わる。


 風がアイシャを包み込み―――けれど、直後にアイシャに襲いかかって来たのは衝撃。


 失敗したのか…………その思いを最後に、アイシャの意識は暗がりへと落ち込んで行った。



 *



 ひと際の轟音が響いた後に、暗闇は静寂に包まれる。

 そんな差中で耳を澄ましていたオーランドは、静かな空間に声を投げた。


「アイシャ?死んだか?」


 その声にも返事はない。

 死んだか、気絶したか、あるいはオーランドに返事をする気がないのか。


 どうあれ、ガーゴイルの狙いが自身に向いたらしい。足音からそう悟ったオーランドは、壁に触れ、呟く。


灯れグロウ


 紋章魔術の起動言語―――けれど、輝きが壁を伝う事はない。

 ブレスにえぐられ、紋章が意味をなさなくなったらしい。


「こっちも死んだか……」


 どうでも良さそうに呟き、オーランドは槍を掲げ上げた。


「ブリッツ」


 その呟きもまた起動言語――ただし、呼び出すのは壁に走る紋章ではなく、オーランドの槍に込められた魔術。


 閃光が瞬く。途切れることなく灼けるような音を響かせながら、オーランドの手の槍が稲妻を帯びた。


 そして、くるりと槍を逆手に持ち替えたオーランドは、その槍を地面へと突き立てた。


「シーク」


 槍が纏う稲妻が、地面へと伝播し―――直後、方々に散って行く。


 さっきまでの明るさほどではない。だが、地面を走る稲妻に照らし上げられ、暗闇は僅かに和らぎ、ある程度の見通しが聞くようになった。


 そんな差中―――オーランドは僅かに遠くで、自身へと開けられる大口を見た。


「おっと、」


 軽い声と共に跳びのくオーランド――濁流はその真横を通り抜けて行く。


 たった今九死に一生を得た―――だと言うのに、尚も飄々と、槍を肩に担ぎ、オーランドは首を捻った。


 考えるのは、ガーゴイルをどうするかだ。もっと言えば、今ガーゴイルに対してどう動くのが最も自分の利益に働くか、である。


 頭が再生しないらしい事は知れた。アイシャの献身の甲斐もあって。

 だが、それを貫けば本当に死ぬのかはまだわからない。


 かと言って試せばガーゴイルを殺してしまう。果たして、ここで倒してしまう事が自身の利益に繋がるかどうか。

 暫し考え、考えている間にブレスを躱し、そしてオーランドは決めた。


 ……とりあえず殺しておこう。いや、殺せるかどうか確かめておく、か。


 死んでしまったらしょうがない。次に似た様な奴に出会った時の教訓になる。死ななかったら?その時はその時で、また使えそうなが訪れるのを待てば良い。


 とりあえず試してみるというのは大事だろう。情報はそのまま金と同義だ。


「ブリッツ」


 歩きながら、オーランドは呟く。肩に担いだ槍が稲妻を纏う―。


 またも、ガーゴイルはブレスを放った。スキップするような気軽さでそれを躱し、オーランドは尚も歩く。


「ブリッツ」


 重ねて紡がれた起動言語――槍に帯びる稲妻がその勢いを増していく―。


 焦るでもなく、慌てるでもなく、ただブレスを軽く躱しながら、オーランドはガーゴイルへと歩み寄っていく。


「ブリッツ」


 三度重ねられた言霊――槍を包む閃光は永遠と雷鳴を響かせ、その輝きは暗闇を灼き、引き裂く――。


 ブレスが止んだ。それをするでもなく尾が、爪が届く距離にまでオーランドが歩み寄ったからである。


 ガーゴイルは、腕を、爪を振り下ろした―――けれどそれが捉えたのは地面だけ。


 やはりスキップするような気軽さで、オーランドはその一撃を躱し、ガーゴイルの懐に潜り込み、そこで漸く槍を構える。


 半身を引いた刺突の構え――切っ先が向いているのは、腕を振り下ろすと同時に、差し出されるように下りて来たガーゴイルの首。


「………バニシングフレア」


 呟きと共に、突き出された槍―――稲妻は巨大な刃を為し、爆ぜ弾け灼き、閃光の差中にガーゴイルの頭部を包み込んで行く――。


 肉が灼けるような匂いが周囲に立ち込める。

 どうやら、ガーゴイルの頭部だけは生物だったらしい。


 丸々そこを眺め、頭部を失い動きを止めた石像を眺め、オーランドはまた、槍を肩に担いだ。


「………本当に、これで死ぬのか?いよいよ、警戒しすぎたな」


 つまらなそうに呟き、オーランドはこの後の算段を立て始め…けれど、そこで音を聞く。


 ごぼごぼと、泡立った様な、濁った様な音が目の前から聞こえて来る―。

 見ると、僅かに残ったガーゴイルの頭部が、黒い泡を立てている。


「なんだ、死なないのか…」


 笑顔と共に呟き、眺めるオーランドの眼前で、その泡は少しずつ膨らんでいく。


 再生、しているのかもしれない。ただ、石像の部分とは違い、即座に再生するというわけでもないらしい。


 少しずつ、少しずつ…子供の歩みの様な遅々たる進みで、怪物の頭部……その残骸は膨らんでいく。


 あるいは、もう一撃食らわせれば、ガーゴイルは本当に死ぬのかもしれない。

 だが、その止めの一撃をオーランドは加えようとせず……ただ、再生する様を観察していた。


 どの程度で、ガーゴイルが再生するのか。それが気になったのだ。


 今、襲ってこない以上、再生の途中は動きが止まるらしい。と言う事は、ある程度の時間無力化できるということである。


 その時間がどの程度か――その情報を得ようと考えたのだ。


 情報と金は等価値だ。あらゆる場面に置いて、情報を握っているものが最も多くの金を手に入れる。そう、オーランドはこれまでの経験で学んでいた。


  世の中には、利用できないものなど一つもない。今すぐでなくても、寝かせておけばそのうち利益に変わる手札というものがある。


 要するに、このガーゴイルも何かに利用できないかと考えているのだ。今すぐでなくても、いずれ、状況が変わった時にでも、と。


 オーランドは長期の計画を立てる事には向いていない。

 そんなモノを立てたところで、十全に事が上手く運ぶ……そんな都合の良い世の中ではない。少なくとも、オーランドにはそんな計画は立てられない。


 だから、オーランドは常に漠然と優位に立ち続ける事にしている。


 どう転んでも優位に動ける状況をあらかじめ作っておく……それが、オーランド生き方だ。

 可能な限り情報を得る。あるいは、情報をおく。


 適当な事を言って人を集め、いざそれを切り捨てる段に不手際が発生し生き残る輩が生まれてしまったら?


 オーランド自身が手を下しては、どこかで糾弾される羽目になりかねない。

 けれど、もしも、あのキャンプのハンター達を、ヒッポグリフが皆殺しにしたら?


 オーランドもまた被害者の内の一人だ。山分けするはずだったお宝が消えてしまっても、きっと、ヒッポグリフが持って行ったんだろう。ヒッポグリフが消えれば、お宝も消える。その内にオーランドを疑ったりもしだすかもしれないが、その前にお宝を持って立ち去って行ってしまえば良いだけだ。


 あるいは、再生するのならば、このガーゴイルにやらせてしまうのも良いかもしれない。

 倒して見せて、洞窟の奥へと進み、戻る頃にはガーゴイルが復活している。


 不幸にもその事態をオーランドは、遅れて仲間の死体を見つけるのだ。


 まあ、どうするにせよ、宝は山分けだ。

 生き残ったで、平等に。数が減っただけ一人頭の利益が増えるが、それは山分けというシステムとしては当然の帰結だ。……嘘は言っていない。


 状況に応じてどうとでも優位に切れる手札を予め握っておくのだ。そのために、情報が大事だ。


 だからこそ、オーランドは気を抜いた美人を覗くのが好きだ。

 弱みを握っておく事には、利益しかない。扱える駒が増えるのだ。たった今利用したように。


 そういえば……と、オーランドはそこで思い出し、周囲を見回した。

 アイシャはどうなっただろうか。


 見回した限りに死体はない。逃げたのか、どこかの瓦礫の中で眠っているか。


 まあどうあれ、これ以上アイシャに干渉しようという気はオーランドには無かった。


 生きているにせよ、生きていないにせよ、手伝ったらこちらからは手出ししないと言う契約だ。


 硬貨は受け取った。

 人は裏切るが、金は裏切らない。オーランドは、そう生きている。


 それが正しいと信じて疑わずに。

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