……駄目なのか…

「へ~。けっこう武器あるじゃん」


 兵士の詰め所―ネロに導かれそこに辿り着いたアイシャは、その武器の充実ぶりに驚いて、そして宵虎の頭をポンポン叩きながら、言った。


「良かったね、お兄さん。より取り見取りだよ?」

「なんだ?なぜ叩く。…まだ怒っているのか?」


 背に負ぶったアイシャに叩かれながら、宵虎はそんな事を呟いた。

 と、そこでアイシャは詰め所の一角を指さしながら言う。


「あ、お兄さん下ろして。そこ、椅子あるでしょ。椅子」


 言葉が通じたわけでは無いが、意図はわかった宵虎は、その椅子にアイシャを下ろし、それから武器を眺める。


 ブロードソード。ロングソード。レイピア。ハルバート。果てはモーニングスターまで…。


 当然それらの名前を宵虎は知らないが、そこには驚く程豊富に武器があった。


「こんなに武器あったんだにゃ。…なんか、趣味を感じるにゃ。まあ、これなら、だんにゃの使ってた武器もあるんじゃないかにゃ?」

「うむ……」


 ネロの言葉に満足げに頷いて、宵虎はどこかうきうきした様子で武器の物色を始めた。

 そんな宵虎を横目に、ネロはアイシャの正面に回って、言う。


「で、アイシャ。作戦とかどうするにゃ?」

「え?う~んと……正面突破?」

「…それ、あんまり作戦って言わないにゃ。そもそも、アイシャはほぼ動けないし、だんにゃ一人で行かせても同じ事になるだけだにゃ」


 さっき宵虎にセクハラされた後、アイシャは一応歩いてみようとしたのだが、結果は悲鳴だったのだ。とにかく、アイシャは歩けない。いや、そもそもだ。仮に歩けたとしても…。


「だよね~。ちなみにさ、スキュラって再生してた?」

「再生?あ~、なんか蛇切っても切っても生えてきてたにゃ」

「やっぱり?シーピショップもさ~。上半身吹き飛ばしても生えてきたんだよね~」

「…しれっとえぐい事やってるにゃ…」

「ね~。再生力えぐいよね~」

「……アイシャの行動の話なんだけどにゃ…」


 そんな風に話を進める二人。と、その耳にやたらジャラジャラとやかましい足音が届く。

 宵虎の足音である。


 二人の真横に立った宵虎は満足げだった。両手に剣を持ち、背中には色々と手当たり次第に取ったとばかりにどう考えても使いきれない量の武器を背負っている。


「どうだ?これだけあれば、一つくらい神下ろしに耐えるかもしれん」


 一応、真面目な宵虎の呟きはアイシャに届かず、ただアイシャは呆れて呟いた。


「……これは、ふざけてるのかな?」

「いや~、真面目にやってんじゃないかにゃ。一応」

「え、そうなの?でもダメだよ、お兄さん。そんなに使えないでしょ?もっと減らして」

「あ~。だんにゃ?ダメだって。減らしてって言ってるにゃ」

「……駄目なのか…」


 宵虎は、しゅんとして立ち去って行く。それを横目に、アイシャはまたネロに問いかけた。


「……ねえ。スキュラって下半身なんだった?やっぱり蛇?」

「にゃ?蛇っぽかったにゃ。多分、足とかもあったけど……少なくとも蛇の部位はあったにゃ。それがどうしたのかにゃ?」

「うん。やっぱり、蛇毒ってやつのせいかな…。ねえ、あの神殿に関する伝承って知ってる?蛇毒って事は、その元になった蛇がいるんでしょ?」

「にゃ?あ~、あたしは知らないにゃ。でも、マスターはいろいろ知ってたにゃ」

「キルケーは捕まっちゃったじゃん。あ~あ、先に聞いとけばよかったな~」

「なんで伝承なんて気になるのかにゃ?」

「いや~。倒し方とか参考になるかと思って。だって、そう言う弱点って引き継がれるでしょ?だいたいさ」

「なるほどにゃ。あ、じゃあ、マスターの家に行くかにゃ?資料とかあるかもしれないにゃ」

「ま、……他に手掛かりなさそうだしね」


 そこでまた、宵虎は二人の横に立った。


 背中には分厚いロングソードを背負い、右手にはブロードソード、左手にはレイピア。

 3本の剣+脇差しを装備して、宵虎は得意げに構えてみせる。


「これならどうだ。……格好良いだろう?」


 そんな宵虎に、アイシャは言う。


「だ~め。一つにしなさい!」


 アイシャが何を言ったのかわからないので、宵虎は横目でネロに確認してみる。


「だんにゃ。ダメだってにゃ」

「……格好良くないのか……」


 宵虎はしゅんとして、また武器を物色しに戻って行った。

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