第2話
「……はぁっ……はぁっ」
「ちょっ……小泉っ……まてよ!何でそんな急ぐんだよ!」
そりゃお前に捕まったお陰でゴールデンタイム逃しそうだからだよ。
俺は、俺たちは走っていた。帰りに友人である加藤に捕まり放課後のゴールデンタイムを逃しそうだったので急いでる最中である。
……っと目印の電柱の角、一方的に見知った顔が歩いていた。どうやら間に合ったようだ。
「わっと!なんだよ急に止まって!なんで最近さっさと帰るんだよ!ちょっとゲーセン誘ったくらいでー最近付き合い悪いぞー」
うるさいぞ会話が聞こえん。お喋りな友人はお世話が大変だな。
……とそうこうしてるうちにほらほら、何やら楽しそうな会話が聞こえてきたぞ?
「あー憂鬱だぁー。勉強かバイトしかできない毎日が憂鬱だぁー。」
「はいはい、お疲れ様です。」
今日も今日とて仲良しお二人さんは楽しそうに帰っていた。
「えっなになにー何があんのーもう走んなくてもいいのか?……んはっ!目の前にいるのは別高の女の子!制服が可愛いと評判の所だ!……ふむふむ……後ろ姿だけでもかなりレベルが高いと見える」
だからうるさいって加藤。お前に用ないから。先帰ってもらって結構だから。
「へっ?ほぅ……ははーん。分かった、これは分かってしまったな!小泉ぃ〜お前は自分から行くタイプじゃないからな〜。ここは!この俺が一肌脱いでキッカケを……そ〜こ〜の〜お二ぐぇ!!」
人の話を聞け加藤!あとそういうのじゃないから!だから頼むから余計なことをしないでくれ!
「なんだよ〜つれないな〜。まっ!小泉には小泉のペースがあるんだな!よし!頑張れよ!邪魔者はお先に失礼するぜ〜またな〜」
二度と帰るかアホ!あとそういうのじゃないって!
……さて
「……なんで人って働くのかなぁ……」
おっと早速nervous mode。
話聞いてなかったから全然わかんね……。
「なんでって……うーん生きるため?ほらー衣食住揃えるのにもお金は必要だよー?」
「うぅん、そうなんだけどねぇ。私が言ってるのは目先のアルバイトのことでしてねぇ」
「そりゃ服買うためなんでしょー?私たち女子高生はお金がかかるよー」
「お金かぁー。なんでわざわざ外に出るための服を買うのにバイトしてるんだろぅ。出来るなら引きこもりたい。そうすればバイトの必要もなし!一日ゲームとご飯で過ごせるのにぃ」
「そんなこと言ったってー。私たち一人じゃそうそう生きていけないよー。卒業したら大学行って就職しないとだよー」
「就職……そっかぁ就職かぁ。それってアルバイトよりキツイ仕事しないといけないってことだよねぇ、省エネタイプの私に……。机に突っ伏してたら終わる一日は無くなるんだよねぇ」
一日殆ど寝て過ごしてるのかよ……すごい忍耐力(褒めてはない)
てかそれ内申に響くよな。提出物やっておけば大丈夫ってのあれ嘘だからな。先生よーく見てるからな。
「あっそうだ!働きたくないなら養ってもらったらいいんだ!ねぇその料理のウデマエと家事スキルを見込んで私を養ってぇー楽させてぇーゲームさせてぇー」
「えーいやだよー。」
「即答!?」
「だってあーちゃん絶対何もしないじゃん。養われる側にもそれなりに仕事があると思うんだよー。」
「そっかぁ。生きてる限りは働かないといけないのかぁ。……なら……よし、決めた!今決めた!」
「なにー突然」
「ふっふ。探せばいいんだよ!私を養ってくれる人を!高校、大学で!そうすればー楽な人生送れるー」
「うっわーでたよー。その斜め下の、やる気をまっすぐ発揮できない所ー。あーちゃんらしくあるけど人としてはダメダメだよー」
「ダメダメで結構〜。はぁ帰ろ。帰ってBotanの新作ゲームやろ」
宣言してもなお感じられないやる気!……なんかある意味楽しそうだな。
しかし、おさげは嫁スキル高いなぁ。料理に家事……あの気だるげポニテもフォロー出来るときた……天使かな?
「あーあー言ったそばから引きこもらない。もー明日はちゃんと起きるんだよ?また徹夜して寝坊したら今度こそ置いてくからねー」
そう言うといつものところで曲がる二人。
今日も聞いてしまった話はなんだか彼女たちの深いところまで知れた気がする。
俺は鼻歌を静かに鳴らしながら残りの帰路を歩いた。
放課後ゴールデンタイム セイヤ。 @daks0008
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