放課後ゴールデンタイム
セイヤ。
第1話
今日も出会ってしまった。
放課後、帰宅部の俺は授業が終わる十五時半、誰よりも早く帰路に着いた。
帰りの学生がほとんどいないこの時間。
何故俺、
「はぁ〜今日も疲れた〜。身体中がだるんだるん〜」
「もー疲れたって……午後の授業ほぼ寝てたのに……。だからだるくなるんだよー」
俺の目の前を歩く女子生徒二人。ここ最近、この時間に帰ると出くわすことが多い二人組だ。
たまたま、あくまでたまたまだ。
偶然にも毎日同じ時間に俺の前を歩く女子生徒がいて、たまたま聞こえてくる会話が面白いから、帰り道の嗜みとして聞いてしまっているだけだ。
決して彼女たちが可愛いからとか、会話が面白いからとかでは、ない。
「あーだるい。もうバイトサボっちゃおうかなぁ」
「ダメだよー。今月三回も休んだんだから我慢しなよー」
「なにを!年下のくせにぃ。私に楽ををさせろぉ」
「もう何回も変わったげたじゃんー」
ポニーテールの子(以下ポニテ)が黒髪のツインおさげ(以下おさげ)の子にだるーんと乗っかって二人がふらついている。
てか、二人は同学年じゃなかったんだな。親しい様子を見ると幼馴染かなんかだろうな。
ポニテはバイトしてたのか。サボりの常連とは。気だるそうな感じもするし、今流行りのダメな娘ってやつか。
「あっそうそう昨日さぁ、サイトー死んじゃってさぁ」
「えっ!?サイトーちゃんが!?」
斉藤突然の死!?なんでバイトのくだりからその話に!?何?友人?の死を「あっそうそう」のノリで言えんの!?
「サイトーちゃん寿命だったのかなー。」
おさげの子が答える。
「違う違うよぉ。掃除しようと思ってナカムラと一緒にしたんだよぉ」
「あーなるほどー」
犯人は中村かぁぁぁ!!!
掃除しようと中村と同じ部屋に移動させたのが原因なのか!?二人に一体何が!?てかよく無事だったなポニテ!通報しろよ!
「確かに、ナカムラって肉食だよねー」
「そうそう、忘れてたんだよぉサイトー金魚だからぁ。魚類だからぁ」
「カメのナカムラもエサだと思っちゃったんだねー。気をつけないとー」
金魚とカメの話かよ!名前ややこしいな!
……カメって金魚食べちゃうんだなぁ。初知り。
そして目の前の女子生徒二人は電柱の角を曲がる。俺はこの道をまっすぐ。つまりここでお別れというわけだ。一方的に。
しかし今日もまた謎の会話が聞けて満足だな。たまたま聞いちゃっただけだけど。
ポニテっ娘は動物飼ってるんだなーそうなんだなー。好きなのかな動物。そっかー。俺も何か買ってみようかなー。
只、彼女は名前をつけるセンスが斜め下さんらしい。新しく知ってしまったなぁ。たまたま。
「あっ、そういえば、可愛い首輪あったからあげるねー。わんちゃんのポン太にプレゼントー」
「おぉー、ありがとぉ」
曲がり際、おさげの娘がカバンからピンクの首輪を出しながらそう言っていた。
…………犬の名前はふつうなのね……
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