光芒のインタリュード〈幕間劇〉

昧槻 直樹

第一幕 夢……?

 ある日の教室。

 机を囲んで、四人の女子生徒が何やら談笑をしている。

「ねぇ、みんな。きいて」

「なに? ヒメ」

 一人の、周りにお花が舞ってそうな雰囲気の少女が、思い出したように話を始めた。彼女の名は本郷陽愛。下の名前が「ひめ」と読むので、それがそのままあだ名となった。その「ひめ」の唐突な話に他の三人は耳を傾ける。

「あのね? 今朝、一限目に余裕で間に合うって言う夢を見たの」

「あぁ、あるあるだね」

「それで遅れたんだ」

 陽愛の左側に座って話を聞いていた関根由依が合槌を打って、月島えりが「やっぱり」と言って笑うと、陽愛は苦笑いを浮かべた。

「うーん、そうなんだけどね? 続きがあるの」

「続き?」


 彼女の話によると、その夢の中でも、由依やえりたちに「一限に間に合った夢」の話をしていたらしく……。

「そこで、みんなに話し終えてホッとした時に夢から覚めたの」

「多重夢ってやつね」

「それで、遅刻に気付いて慌てて学校に来たのね?」

 もう一人、話を一緒に聞いていた仲良しグループの一人、風間瀬里は合点した風に頷いた。

「そう、慌てて学校に来たの」

「うん」

「それで、みんなにその今朝の夢の話をしたの」

「うん…………え、した?」

 三人が、微妙な表現の違和に気付いて首を傾げた。陽愛は相変わらずニコニコとしている。

「うん、そうなの。今朝見た夢と、今見てる景色とか話の流れが、ほとんど変わらないから、凄いなぁと思って、不思議な気持ちになってるって話」

「なるほど。夢を何度か、繰り返してたんだね」

「そりゃ、一限丸々欠席になるほど寝坊するよね」

 瀬里や由依が呆れている中、陽愛はにこやかに「だよねー」と呑気に返した。すると、えりが悪戯っぽく笑った。

「ねぇ、陽愛ちゃん。もしかしたらまだ夢の中かもよ?」

「え、まだ?」

「えりの言う通りだよ。確かめなきゃ」

「陽愛、頬っぺたつねらなきゃ」

 由依や瀬里もふざけだし、えりが手を伸ばして陽愛の頬を徐々に強くつねった。

「あ、あぁーひたい(痛い)、ひらい(痛い)。最後に見た夢の通りだよぉ」

「え、これすらも?」

「陽愛、どんな夢見てるのよ」

「じゃぁ、今が夢か現実か分からないね」

「大丈夫だよ。起きてるよ、もう」


 ある日の教室。二限目の始まりを知らせるチャイムが鳴る。

 机を囲んで座っていた四人の女子生徒が、慌てて各自の席に座り直した。

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