第3話 『パズル&フェアリーズ』
「ゲーム?」
「そ、私とゲーム。一緒に遊べばそのうち慣れてくるんじゃないかなって。
それくらい良いでしょ?」
友好研究会設立2日目、天野川から「私と一緒にゲームしよう!」と突然の提案が上がった。
「それくらいならまぁな。で、何やるんだ?」
「これよ」
天野川がドヤ顔で見せてきたスマホには、一時期大ブームを巻き起こした人気スマホゲーム『パズル&フェアリーズ』の画面が表示されている。
「パズフェアか、これなら俺もやってたな。
最近開いてないけど、アプリは入ってた筈だ」
自分のスマホを取り出して、アプリをまさぐっていると、半年位放置していた『パズル&フェアリーズ』がまだ残っていた。
因みにこのパズフェア、フェアリーズと謳ってはいるが、強キャラランキングなるものに妖精がいた事はほとんど無い。
「でもこれどうやってやるんだ?
協力なんて無いだろ?」
「え?何言ってるの?
普通にあるでしょ、ほらここ」
マジか。
マジであった、協力プレイ。
画面のレイアウトまで変わってるし、俺がやってない間に色々進化してたのか…ソシャゲ恐るべし。
「それじゃあ、私がホストね。
ルーム番号は7474521」
えっと、協力プレイから…これか、ルームIDの入力。
7474521と。
「あ、来た!それじゃあ行こ!」
「ああ」
ふと画面に目をやると、天野川のランクが目に入る。
天野川のやつ、ランク12って…まさか始めたばっかか?
結果はといえば勝つには勝った。
けど、歯ごたえはなかった。俺のランクが457なのに対して、天野川は12。
天野川のランクのスタミナ上限でしかクエストが選択できず、仲良くなるどころか俺からすれば天野川に時間を無駄に消費された気分だ。
「なぁ、天野川。
やるならもっとやり込んでからにしてくれ。まともなクエストが選べないだろ」
「だって、今日の朝思いついたから…。
それに、八代が457なんて…そんな高いランクだと思わなかったし」
唇を尖らせてブツブツ文句を言う天野川。
実に腹立たしい。
「ともかく、ゲームするならもっとお互い平等な方がいいかもな」
「アドバイスなんて、八代も乗り気になってきた?」
「なるか。また意味も無くに 作業ゲーさせられるのは嫌なだけだ」
天野川のあからさまに明るくなった顔が、あからさまに暗くなった。
「ゲームの方向性は今後の課題ね…。
御手洗行ってくるから、何か考えといて」
頭を悩ましながら部屋を出る天野川。
考えといてって、そんな無責任な。
しかし、このまま天野川に振り回されるのも釈然としない。どうせ振り回されるなら、自分から案を出すのも悪くない。
そうこう考えていると、誰かがドアをノックする音が聞こえる。
「天野川、じゃないよな。
どちら様ですかー!」
返事がない。
「あのー!」
大声で叫んでも返答は一切ない。
「何なんだ一体。イタズラか?」
あまりに返答が無いので、俺は自分からドアを開けに行った。
「かたじけない、ここは友好研究──」
バタンッ!
あ、思わずドアを閉めちゃった。
いやいやいや!あれはそうなるって!
何だあれ!?
え?鎧?刀?え?え?
脳の処理が追いつかない。
ドアの前にいたのは確かに女子生徒だ。けど、明らかに普通じゃない!
と、兎に角もう1回確認を…。
「殿。拙者、何か迷惑でも──」
バタンッ!
見間違いじゃなかったー!
なんだあの女!?制服の上から戦国武将みたいな鎧を模した装甲を装備してたぞ!
しかも腰に2本の刀まで!
そしてこの女、律儀に部屋の前で待ってやがる!
……入れるか?
「…あのー、入ります?」
「はい」
──
「で、その人は一体…誰?」
「俺に聞くな…」
天野川の質問は至極真っ当なものだと思う。
見知らぬ人がいた時点で疑問符は浮かぶのに、そこに輪をかけて鎧武者と来た。
その鎧武者は、姿勢を正して天野川の方に向きかえる。
鎧がガシャガシャ音を立てる。
「拙者、1年B組上杉鈴凛と申します。
友好研究会へ入部致したく参った次第でございます」
「はぁ」
服装に似合わない穏やかな口調で自己紹介をする彼女──上杉鈴凛。
天野川も状況が読み込めないのか、ただまじまじと上杉を観察している。
「姫、殿、不束ものではございますが、何卒よろしくお願いします」
「と、殿?」
「姫…?」
ツッコミ所は色々あるが…今は本人に満足がいくまで話させてあげよう。
そうすれば彼女の事を少しは分かるはずだ。
本日の成果、鎧武者が入部希望してきた。
苦手な物に更に輪をかけられてはたまったもんじゃない。
JKが苦手な俺に彼女ができるまで 宝生フェノル @fenoru_houzyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。JKが苦手な俺に彼女ができるまでの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます