第2話 『友好研究会』
「『友好研究会』?」
「そ、私達にピッタリの名前だと思わない?
部員4人以下は研究会扱いになるけど、部活と同扱いだし」
次の日の朝、天野川星座は凝りもせず俺に話しかけてきた。早くどっかいってくれ。
昨日の意地でも治すって言うのはガチだったのか。
「言っとくが、俺はお前と馴れ合うつもりは無い」
「うわ痛っ!私達もう高校生だよ!」
「っ!?ほっとけ!」
おい、皆してこっちを見るな。
「でも不思議だよね、苦手意識なんて。
私とは普通に話せてるじゃん?」
「コミュ症じゃないからな。
苦手なだけだ、理由もなくな」
そう、ただ苦手なだけ。
誰だってそうだろう。苦手な相手とは話せない訳じゃないし、関われない訳じゃない。
でも、極力関わりたくは無いし、馴れ合いなんて以ての外だ。
「それ、私からしたら理不尽過ぎて納得できないんだよね。
だからこそ部活やって、3年間で女子高生苦手症を克服しようってね!」
「ふむ、断る」
「なんで!?」
「別に治して欲しいなんて頼んでないし。
それじゃあもう話しかけんな」
「いいの?
この学校、部活強制だよ?」
…………………………………………忘れてた。
だが、だからと言って天野川と同じ部活に入る理由はない。
「何処に入っても女子高生はいるよ?
八代は友好研究会よりも女子高生が多い部活、しかも1から関係築いていきたい?」
こいつ…。
確かに俺は運動は苦手な時点で運動部は論外。
となると文化部は美術部、吹奏楽部、茶道部、軽音部、漫画研究部。
入学前に調べたところ、全て女子生徒が過半数を占めていた。
あぁ、後はメイド喫茶研究会なんてのもあったな。
男しかいないけど、絶対行きたくない。
「どう?他に手段はある?
苦手とはいえ、関係性を築いた私と2人だけ。更に目的は八代の女子高生苦手症克服な訳だし、顧問とか先輩のこれといった制約もない。
どう?結構いい条件だと思うけど?」
「だとしてもだ、そもそもの女子高生苦手症克服が面倒なんだよ!」
「そう言われてもなぁ、承諾前提で八代の入部届け出しちゃったし」
「なっ…」
なんて恐ろしい事を…。
かくして俺は友好研究会なる、傍から見たら可哀想な部に所属する事になってしまった。
──
様々な文化に触れ合えるようにと、学校が整備した別館。
見た目は普通の校舎となんら変わらないのに、和室や洋室、何処の民族だか分からないモチーフの部屋まで存在する多様文化の建物。
その中の一つ、洋室がメインとなった『反省室』(今は名前だけの部屋)が俺達友好研究会に与えられた部室だった。
「へぇ、反省室って言うからどんな殺風景な部屋かと思ったら、案外しっかりしてるしゃん」
部長(という事になってる)の天野川は、この部屋を大変お気に召したようだ。
確かに、テレビにソファにテーブル。コンセントに食器棚まで完備されてて、完全に住居に近い設備が整っていた。
「確かに、こいつは凄いな」
天野川と一緒に部活ってのは癪だが、放課後をこの部屋ですごせるなら悪くないかもしれない。
「さて、それじゃあ八代。早速本題に入りましょうか!」
我が物顔で誕生日席のソファに腰掛けた天野川。
逆らっても後々面倒だから従っておく。
ま、いつか飽きるだろ。そしたらこの部屋も俺の自由だ。
「それで、治すったって具体的にどうすんだよ?」
「どうするってそれは…うーん……」
「うん、大体わかった。
天野川、お前行動だけして、中身ゼロだろ?」
「うっ…。で、でもよく言うでしょ!
天才は99%の閃きと1%の努力がうんたらかんたら…」
「逆だ逆」
エジソンが聞いたら激怒しそうだ。
「じゃあこうしましょう!
当面の目標は解決策を見つける為の解決策を探すって事で!」
「ま、好きにしてくれ」
今日の成果、部室を手に入れた。
…治療の進み具合は0歩から大幅に後退した。
因みに、翌日の朝。自ら反省室に赴く俺と天野川を見たクラスメイトから慰められた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます