歪な穿孔

深夜 酔人

 冬は、寒さで水蒸気が霜になり、一緒に不純物も落ちるから空気が綺麗なんだ、と塾の先生は言った。ちょうど塾内の換気扇が壊れて喉の痛みに悩まされていた時なのでよく覚えている。

 私はだからか、と納得しながら今日の月を再び見る。


 ぎらりと黒に映える鋭い光。


 さながら絶望の中に少しだけ入った亀裂のよう。だけど触れることすら叶わない、「希望」を写した刀身の一部。


 美しい三日月は夜に染まった海の上に、煌々と存在していた。ズタズタの心を前に、さも当然の様に。意思も感情もない、完成された風景だった。


 それを私は、ただ美しいと思った。


 思うに、自然はとても人間に似ている。遠慮なく全てのものをふるいにかけ、残ったものを我儘だと罵る。結局、自分が一番なのである。我儘な他人など、はなから眼中に無いのだ。唯我独尊が悪口とはよく言ったものだ。それを背負いてなお気高くいれるものこそが美しいというのに。


 夜の隅 研ぎに研がれた 銀剣や

照り輝けよ 君は美し


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歪な穿孔 深夜 酔人 @yowaiyei

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