ちこくちこく~!から始まる平成ベタオールスターズ!

ちびまるフォイ

1つでもあるあるなら、デスゲーム送り

「ちこくちこく~~!」


私、ベタ子。中学4年生。

クラスでは地味メガネって呼ばれていると妄想しているけど、

本当はみんなに好かれている愛されボディのアラサー女子。


え? なんで食パンくわえながら走ってるかって?


それはね、今朝お母さんが起こしてくれなかったの!(サイアク~!)


「もう、今日は日直だから早く起こしてって言っていたのに~~!」



どーん!



「いたたた……もう誰!?」


「痛ってぇ、お前こそ気をつけろよ、このブス!」


「誰がブスよ! このよそ見男子!」

「なんだと~~!?」


お互いの顔を見合わせた時、違和感に気がついた。


「え……どうして、私がそこにいるの!?」

「なんで俺がいるんだ?」



「「 私(俺)達、入れ替わってる!?  」」



その後、なんやかんやあって学校に到着した。

でも不思議なことに怒られることはなかった。


「みんな、今日は転校生を紹介する。入っていいぞ」


「えーーっと、私……じゃなくて、俺は、佐々木です」


女子から黄色い歓声が上がる。


「佐々木の席は窓際の、あの空いている席だから」


先生が指さした先には。


「あ~~! 今朝の!」

「あのメガネブス!!」


体が入れ替わっているのも知らないままお互いを指さしてしまった。

クラスのみんなには笑われるし。もうサイアク。


休み時間になると体を戻す方法はないものかと、

このインターネット全盛期に図書館で関連の本を調べることにした。


「えっと、体を入れ替える方法は、と……」


本棚に手を伸ばした時、横から伸びる手と重なってしまった。


「あっ……///」

「っと、悪い……」


「佐々木くん、だよね」


「お前、その言葉で女みたいなしゃべりするな。気持ち悪いだろ」

「ごめん……」


「はぁ、お互い体を戻したいってのは同じなんだし協力しようぜ」

「そうだね」


都合よく本に書かれていた内容によると、

階段から転げ落ちながら鼻につっこんだイヤホンでお経を流し

口から聞こえてくる波阿弥陀仏に私の心が共鳴する時、体が戻るとか。


「やってみようよ!」

「そうだな、これしかない!」


私達はとりあえず試してみようと、学校近くの恋人坂にやってきた。


「よし落ちるぞ!」


佐々木くんはゴロゴロと階段から落ち始めた。

タイミングを合わせてその体にぶつかるように飛び出した時。


「あ、危ない!!」


勢いよく飛び出した佐々木くんはガードレールを越えてトラックの真正面へ。

そのままトラックに跳ねられたその体はどこかの異世界へと転生された。


「な、なんだぁ? なにかひいたような!」


「ささきく~~~~ん!!!」


かくして、私の芽生え始めていた初恋はトラックにより阻まれた。



「そう、あの日もこんな雨が振っていたな……」


男の体になれ始めたある日の帰り道。

どしゃ振りの雨の中、傘も差さずに立っている男がいた。


「お前も……ひとりぼっちなのか……」


不良とわかりやすく刺繍された絶滅危惧種・短ランを着ているその男は、

電柱のそばに置かれているダンボール箱から子猫を拾って、服に入れた。


トクン……。


私の心が動くような音が聞こえた。


「フッ、今のアイツ、なかなか見どころありそうだな」

「お前……!」


「ただの解説役さ。ところで、あの男。

 不良高校3年の恋愛ポジション攻めだ。お前にあいつが落とせるかな」


「俺は……自分の全力をつくすだけだ。

 支えてくれたチームのみんなに報いてみせる」


「その粋だ。まぁ、せいぜいあがくことだな。決勝で待つ」




「誰だアイツ」


なんやかんやあって、結局その雨で風邪を引いてしまった。


家までの帰り道で倒れたところをさっきの不良に助けられてしまう。


「あまり無理するな。すごい熱だったんだ」


「どうしてこの家が……」

「通りがかっただけだ」

「両親は?」


「エンドレス出張でずっと海外。家にはいつも一人だ」


「そうか。それはよかった」

「よかったって……ま、まさか!?」


この機に乗じてなにかする気じゃないかと身構える。


「実は、お前はこの家の子ではない」


「なん……だと……!?」


「実はどこかの世界のものすごい英雄の孫なんだ。

 お前にはその血が流れている」


「そうか、それで普段は自分の純情な感情が

 3%くらいしか開放されなかったのか!」


「気づいていたようだな。そして、俺はお前に必殺技を授けにきたのだ」


「それはいったい!?」


気になったとき、体が瞬間移動して真っ白い部屋につれてこられた。

他にもいろんな人が寝そべっている。


「やぁやぁ、みなさんこんにちは。私はゲームマスター。

 これからみなさんには命を賭けたゲームをやってもらいます」


「ふざけるな! どうしておいどんがそんなことに参加しなきゃならないんだ!」


反抗した男の頭が爆発した。


「私に逆らうやつはみーんなこうなるから覚悟していてね。

 ルールは簡単。この世界全体をつかって……」


その後もゲームマスターはいかにも大学ノートに書いてありそうな

細かいゲームの設定をこじらせ気味に話していたが、興味は別の場所に惹かれていた。


「佐々木……くん……!?」


「ベタ子……!?」


そう、ゲームマスターはあの時前転しながらトラックに引かれた佐々木くんだった。

今では似合わない眼帯をつけて髪もクソダセェ色に染めてるけど、見間違えるはずはなかった。


「どうして!? どうしてこんなことするの!?」


「俺は……俺はこんな体にした世界の人間を許さない!」


「そんなのだ80%以上が逆ギレじゃない!!」

「異世界でバカになったんだよ!!」


デスゲームはいつしか同窓会のような様になってしまった。

私達は戦うしかないのか。それ以外の選択肢はないのか。


「グァハハハハ! 佐々木よ、何をモタモタしている」


「大魔王クローマク様!!」


「この世界で人間は増えすぎた。それを粛清する役を

 時給680円でやらせているのにその体たらくとは情けない。

 われが直々に手を下してやろう!!」


「そんなこと、私がさせない!!」


そのとき、私のなんか昔の英雄から授かったいろいろな能力が発現した。

このデスゲームの首謀者を知った世界の人が力を分けてくれる。


「みんな!! 私に力を貸して!!」


世界の人から力を少しずつイイネ!!の輪が広がり、

どんどん大きな力となって膨れ上がる!


「なんだ!? この人間にいったいどこにそんな力が!?」


「必殺!! バズり玉ァーーーーーッ!!!!」



「グアアアアァ!! バ、バカナァアーーー!!!」


魔王クローマクは消えて、特にピンチでもなかった世界は救われた。

そしてデスゲームからも解放され、ついでに私達の体ももとに戻った。






あれから数十年後。


「それが、パパとママのお話なの?」


「そうよ、ママはこんなドラマチックな経緯を経てパパと出会ったの」


「ママはしあわせ?」


「ええ、幸せよ。あなたに出会えて、こんな幸せな家庭をもてたこと。

 本当に毎日幸せだわ」


「ママ、よかったね」

「そうね、あなたにも幸せになってもらうために練習しなきゃね」


「え? 練習? なんの?」


娘は嫌な予感を察知するように顔がくもった。




「もちろん、食パン加えて走る練習よ♪

 それさえできれば幸せになるんだから」

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