閉扉
「シュプロンド!」
セレーナが扉の前に立ったのを確認して、炎の龍は呪文を唱えた。
すると、ドアがゆっくりと開き始めた。
「またね・・・。」
セレーナは振り向いて僕達に手を振った。
「デドギブル・・・。」
!?
どこからか聞こえてきた呪文に反応して、セレーナの体が黒く光り出した。
そして、その体の黒い光は吸収されるように扉へ放出された。
すると、魂を抜かれたようにセレーナはスルっとその場に倒れた。
扉から溢れ出ていた虹色の光が消えた。
「何が起こったんだ・・・。」
僕は驚きながらも、セレーナの下へと走った。
その間、扉はゆっくりと閉まり出した。
「何じゃと・・・。
何故閉まる!?
それに、一体今の黒い光は・・・。
シュプロンド!
シュプロンド!
・・・。」
何度も炎の龍が呪文を唱えるが、扉が開く気配はなかった。
そして、扉は完全に閉じた。
「まさか!?」
炎の龍も直ぐ様セレーナに駆け寄った。
「レイアントホールヴァス!」
大地の揺れと共に炎の龍が光り出した。
そして、その光は炎の龍から飛び出して一つの小さな塊になってセレーナの体へと飛んで入っていった。
「ゲホッ、ゲホッ!」
セレーナは、大きな咳をして息を吹き返した。
「良かった・・・。
お前凄いじゃん・・・!?」
僕が炎の龍の方を見ると、体が4分の1になって酷く弱ってる炎の龍の姿があった。
「・・・、間に合ったか・・・。」
炎の龍が荒い呼吸を繰り返していると、セレーナの意識が少しずつ戻ってきた。
「何があったの・・・?
ゲホゲホ・・・。
私・・・、死んじゃうの?」
セレーナは、薄っすら目を開けて弱々しく声を出した。
「大丈夫、死なないよ。
炎の龍が助けてくれたからね。」
「良かった・・・。
ありがとう、ほのちゃん・・・。」
セレーナは安心したのか、少し微笑んでそのまま再び目を閉じた。
僕が驚きながらそのままそこにいると、炎の龍がゆっくりとこちらへ足を引きずりながら近づいてきた。
そして、セレーナの手に軽く触れた。
「眠っているだけだ。
セレーナ・オブ・キング様は生きておる。
時期に目を覚ますだろう・・・。」
「ありがとう、炎の龍。」
僕は、心からお辞儀した。
「次に回復魔法を執り行う。
少し下がっておれ。」
僕が少し離れると、炎の龍は体から優しい炎を出してセレーナの体を覆った。
一瞬動揺して炎を龍を止めようとしたが、炎の龍がそんなことをしないと思って留まった。
炎が全て鎮火し終わった瞬間、セレーナはピタッと起きた。
「おはよ~?」
「おはよ!」
僕は心から返事をした。
そして、改めて炎の龍に感謝するため頭を下げた。
頭を上げると、更に1/4の大きさになった炎の龍がいた。
「良かった、良かった・・・。」
炎の龍はそう言うと、ゆっくりと体を地面につけた。
僕の心は、完全に感無量だった。
「よく聞け、富士ノ晴樹イ
今吾輩はお主の頭の中に話しかけておる。
セレーナ様は、何者かの呪いに掛かっておった。
吾輩よりも位階が高く、とても強力な者の呪いに。
そのせいか、セレーナ様はこの世界から存在が無くなりかけておった。
存在が無くなった者は、この世界から消滅してしまう理の関係から、吾輩の力を2度使ってセレーナ様の存在を書き換えた。
そう、お前と一緒の第12位階の異世界人として、この世界に再登録させたのだ。
吾輩の力ではここまでしか出来なかった・・・。
すまぬ。」
炎の龍は頭を地面に擦り付けた。
「富士ノ晴樹イ、先程までした吾輩の身勝手な振る舞いを詫びさせてもらいたい!
どんなことでもお主の言うことを聞く!
だから、1つ吾輩の願いを聞いてくれないか?
セレーナ様を、セレーナ様を無事に第一位階の神王様の所まで連れていってくれないか?」
緊迫した空気、完全にここら辺一帯が静かになった。
「なら、俺と友達になってくれ炎の龍。
セレーナは必ず俺がお父さんの所まで届けてやる!」
「感謝する・・・。」
僕と炎の龍は、お互い笑顔で握手をした。
マスクメロン オレガ @saus
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