第27話
もう、一歩も歩けねーよ。
キサラギはミナミ区、つまり、私のバイクが止めてあるその先に、これから来る予定だ。
現在地からニシ区の外れまで行って、そっから迂回して護送車に向かうことは、今の私には不可能。
「無理、じゃんか……」
思わず、弱音を吐く。
誰か、颯爽と私の前に現れて、助けてくれねーかな。
そうだ、ウォーリー。
成長したウォーリーが、カンナ姉さん、助けにきやしたぜ、とかなんとか言って、現れるのはどうた?
……何キャラだよ、ウォーリー。
「……へっ、いつから私は、そんなヤワになったんだよ」
私は、すぐに考えを改めた。
ウォーリーの顔を思い出したら、こんなダセー自分が情けなくなっちまった。
守るのは、私の役目だろ。
「駅前に、でけー病院があったよな」
郊外には向かわないで、あえて駅前を目指す。そこで、輸血をして、更に地下鉄でミナミ区を目指すんだ。
「……ウォーリー、待ってろよ!」
私は、家から飛び出した。
堂々とセンター通りを歩く。
住宅街の入り組んだ道は、迷う上にいつ何時襲われるか分からない。
センター通りなら、影はあんまりねーし、ここら辺は催眠に落としたガーゴイルが、かなりの数紛れてるから、助けてもらえる。
私は、姿を敵に晒しつつも、安全に病院を目指した。
「……ついたか」
イーストシティ総合病院に到着。
輸血なんて自分でできないから、看護婦が残ってくれてることに期待するしかない。
だが、その可能性は、高いハズだ。
私は、病室のドアを開けた
「……あなたは?」
やっぱり、いた。
看護婦だ。
彼女らは、人助けを生業にしている。
病室で寝たきりの患者を、放って逃げるようなタマじゃねーよな。
「頼む。 急いで、輸血してくれねーか?」
輸血を済ませて、何とか地下鉄まで到着した。
後は、バイクに乗って、護送車にこの槍を届ければ、しまいだ。
「大丈夫ですか?」
「……ああ、問題、ねーよ」
血にまみれた私を、周りの乗客が気遣ってくれる。
問題ねー。
槍さえ届けられれば、それでいい。
私の命が、そこまでだったとしてもな。
電車から降りると、一斉にカンナコールが沸き起こった。
「カンナ、もう少しだ!」
「頑張れ、頑張れ!」
……何だ、コレ。
ああ、そうか。
みんな、最初に催眠にかけた奴らか。
ったく、いつまでも催眠にかかってんじゃねーよ。
「言われるまでもねーっつの」
絶対に、最後までやり遂げる。
それが、私の使命だから。
おわり
守護者は死神 @moga1212
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