第26話

やや広い畳部屋。


その奥の中央に、壁に取り付けられている何か。


袋に入っているが、形状的には槍か?


多分、私の身長くらいの長さだ。


妙なのは、その袋に鎖がガチャガチャ巻き付けてあって、南京錠がぶら下がっている点。




「……何か、書いてあんな」




 括ってある南京錠は、3つ。


よく見ると、ローマ字で名前が入っている。


一つ目は、ROKI.


二つ目は、THORU.


三つ目は、KANNA.




「カンナ? それって、私のことか?」




 自分の名前の入っている南京錠を手に取ると、カシャン、という音と共に、外れた。


全く意味が分からねーが、とりあえず、残りは二つか。




「とにかく、こいつを本部まで持ち帰らねーとな」




 槍(恐らく)は、かなりの重量がある。


鎌とこいつ、両方は持って行けない。


私は仕方なく、鎌を地面に置いて、槍を担ぎ上げた。


そもそも、さっき限界を超えて力を行使した為か、鎌が熱を帯びている。


オーバーヒートだ。


こうなると、しばらくは能力が使えない。




「……」




 さて、外はガーゴイルだらけだし、さっきからフラッフラだ。


血が、足りなさすぎる。




「ゲッコウに連絡取るか」




 私は、槍を担いだまま、携帯を取り出し、ゲッコウにかけた。


数回のコールの後、相手が出る。




「……ゲッコウだ」




「カンナだ。 今、イーストシティのウォーリーの家に来てんだ。 詳しいことは帰ってから話すから、応援が欲しい」




「……ダメだ」




 は? 


こいつ、まさか本当に諦めちまったのか?




「ふざけんな! ケガでどうしても動けねーんだよ、急いでくれ!」




「お前が本部に戻れば、ガーゴイルどもを引きつける可能性がある。 奴らの能力を忘れたか」




 影に潜る能力……


ゲッコウの野郎、私の影にガーゴイルが潜んでることを懸念しているのか。


舐められたもんだ。


私は、死ねっ、と叫んで携帯を切った。


……アレッ。




「……何だ?」




 天井が見える。


貧血で、倒れたのか。


寝てる場合じゃねーよ。


どうにか、槍を杖代わりにして、起き上がる。


……やっぱ、どうしても応援がいるな。


私は、キサラギに電話をした。
















 キサラギに、護送車の準備を頼んだ。


死神の手配が出来ないから、キサラギ本人が直接来てくれるらしい。


ただし、イーストシティの郊外まで、とのことだ。


それより内側に入るのは、防弾ガラスの車でも危険。


何とかして、車にこいつを運ばなきゃ行けない。


ところが、私の体力は既に限界に達していた。








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