第270話 エイミィの親
龍児と刀夜、二人は互いの牙を研ぎあうような険悪感を振り
この二人はいつまでこんなことを続けるのかと皆は
「はいはーい」
まさに天の助けとばかりに美紀は玄関を開いた。やってきたのはアイリーンとアイギスそしてエイミィ・ルージュだった。エイミィはアイリーン足にぴったりと抱きついている。
「あらま……」
「すまないがお邪魔してよろしいか?」
「はい、ぞうぞ」
美紀が扉を大きく開けて中に入るように
美紀は何事かとその様子を
エイミィは一目散にリリアの前に駆けてきて立ち止まるとリリアの顔をじーっと見つめた。
「えっと……エイミィちゃん?」
見つめられてリリアは耐えられずに彼女の名を呼んだ。
「ママっ!」
突如エイミィはリリアに抱きついてきた。
「ええーっ!!」
一斉に驚きの声があがる。睨みを効かせていた刀夜と龍児もこれには驚きを隠せない。
「す、すまない。迷惑かと思ったのだが、どうにも手がつけられなくてな……」
ゆっくりと部屋に入ってきたアイリーンが申し訳なさそうにしている。
リリアに抱きついているエイミィの目はうっすらと涙を浮かべていた。彼女がリリアのことをママと呼んだ理由は現場に居合わせた者には何となく察しがついた。
エイミィの母親とリリアは少し似ていたのだ。現場の部屋にはリリアがもっと大人になったような絵が飾られたいた。エイミーの母親はリリアと髪の形や色が似ていた。
だがまだ幼げな印象が残る今のリリアでは大人の雰囲気をもつエイミーの母親と異なるのは確かだ。
なのにエイミィがリリアをそう呼ぶ意味は少し怖いことだと現場にいた彼らはそう思えた。
特に刀夜はその気持ちがよくわかる。親を失った事を受け入れられず、代わりになるものを求めているのだ。
「本来なら親戚筋に引き取ってもらうのが筋なのだが、どこも事件のことを知ると尻込みしてね……」
アイリーンの言葉に刀夜の心はチクリと何かが刺した。その境遇を刀夜はどこの誰よりも痛いほど知っている。そしてその後どうなるかも彼が一番良く知っていた。
エイミィはもう一人の自分なのだと思うと刀夜は歯ぎしりをした。
「その……寂しさのあまりか夜泣きも酷くてな。彼女ならなんとかなるかもと思ったのだ……」
アイリーンはちらりとリリアを見た。そしてここにきてエイミィが見せた反応に正解だと感じた。
だが刀夜やリリアには縁もゆかりもない迷惑ごとでしかない。リリアもエイミィの境遇に刀夜同様に自分を重ね合わせていた。彼女もまた親を失い居所を失ったのだ。
「刀夜様……」
リリアはエイミィの頭を撫でながら刀夜の顔を
刀夜はエイミィが古代魔法を使用したことをいまだに疑っていた。もしエイミィが古代魔法を使ったのなら彼女の親の死は彼女の可能性がある。
そんな危険人物をリリアの
エイミィの境遇には同情を禁じ得ない。だがそれとこれとは別である。リリアは刀夜の表情をみて反対なのだと感じた。
「あの、差し出がましいですが一日様子をみてはどうでしょうか? 刀夜様」
リリアは何とかして欲しいと刀夜に目で訴えている。
「おい、刀夜。こんなに
龍児が無責任なことを言う。
仮にエイミィが親の死因と関係なかったとしても自分たちが元の世界に戻るとき、リリアとこの娘は置いていかなければならないのだ。リリア一人にその重荷を背負わせる気なのかと。
感情だけで無責任なことをいう龍児に刀夜は腹が立ちそうだった。だったら金をやるから自分でやってみろと言いたくなる。
だが、リリアの目は潤んでいて今にも泣きそうだ。
「1日だけだ……」
刀夜の言葉に皆は喜んだ。リリアは刀夜にお礼の言葉を述べてエイミィの髪を再び撫でる。そんな二人に刀夜は一抹の不安を感じていた。
◇◇◇◇◇
その後リリアだけに懐いていたエイミィは子供らしく他に構ってくれる美紀、舞衣、葵にも心を開き一緒になって遊んでいた。
みんなで昼飯を取る。だがお腹が膨れてきたエイミィの目はトロンとし始め口に頬張ったご飯をモニョモニョと動かしながら夢うつつで食べている。
昼寝をさせると30分ほどで再び元気となって皆で一緒にプールで遊んだ。
こうやってみていればエイミィはごく普通の子供だ。刀夜は自分の見立てが間違いなのではないかと思えてきた。もし彼女が殺人と無関係なら彼女を引き取っても良いかもしれないと。
だが刀夜は頭を振った。だめだ自分が帰還したらリリアに彼女を押しつけることになってしまう。
刀夜はリリアに余計な負担をかけさせたくなかった。たとえ一時的に彼女に恨まれる結果となったとしてもそのほうが良いと考えた。
だがその時プールを眺めていた刀夜の目に梨沙の姿が映った。刀夜は彼女の言葉を思い出す『相手の顔をちゃんと見ろ!』そのように梨沙に怒られた。
自分一人で決めていいわけない。リリアとちゃんと相談すべきなのだ。刀夜は自分の考えを今一度考えなおして今夜リリアに相談してみようと思った。
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