第251話 脱げば凄いんだから

「さぁ、泳ぐぞ!」


 葵が元気よく水着に着替えてホテルから出てきた。


 彼女は少し大きめのフードつきパーカーを着ており、パーカーの下からは贅肉がそぎ落とされた筋肉質な足をさらけ出している。


 着ているパーカーは薄いためか下の水着がうっすらと透けていた。


 ホテルの外ではすでに準備を済ませていた龍児と颯太が待ち構えている。ズボンの足を切ってサーフ型の短パンにしただけの簡素な作りで上には舞衣が作ってくれたパーカーを羽織っている。


 飲み物が入ったバッグと、どこから借りてきたのか大きなパラソルを持っていた。


「へえー」


 颯太が葵を舐めまわすように凝視ぎょしする。だがパーカーのせいで水着が全然見れなくて残念だとため息を漏らした。


 しかし清涼感ある薄いグラデーションのかかったパーカーは活発そうな葵によく似合っているなと颯太は感心する。


 続けてホテルから由美が出てきた。


 大胆な純白のバンドゥビキニ姿だ。美紀が最近の流行をしっかりと取り入れていてデザインしたものだ。


 全体的なプロポーションは自信があるが若干胸に自信がないので彼女はこの水着を選んだ。胸の部分がぐっと締まりこんでくるので胸がボリュームアップしたかのように見えるのだ。


 だがブラにワイヤーを入れることができなかったので紐付きとなっている。そして大胆に開いた胸元が男子の欲望をそそる。


「また随分と大胆なのを選んだな」


 少々大人びたその水着に龍児は目のやり場に困ってしまう。由美は背が高く背筋がしっかりしているのでまるでモデルのようだ。グラビアアイドルとは違って大人の雰囲気がある。


「し、仕方ないじゃない。美紀がコレが似合うと言ってくれたんだから……」


 そうは言いつつも由美はこの水着が気に入っていた。普段は競技用水着ばかり着ているので一度、このような水着を着けてみたかったという思いが強かった。


「いや、確かに似合っていて……そのなんつーかセクシーだな」


「あ、ありがとう」


 二人は顔を赤らめてお互いを見れなくなってしまう。そんな二人とはうって変わって颯太は下から上へと舐めるように彼女を見る。


「さすが由美。いいプロポーションしてんなぁ~」


「あなたに言われるとなぜか辱しめを受けているような気になりますわ」


 由美は手にしてワンピースで前を隠した。


「ひでぇ!」


 だが由美ばかり誉められて置いてきぼりを食らった葵の対抗心に火が着く。自分だって胸はなくとも自警団で絞ったボディラインと美紀がデザインしてくれた水着には自信がある。


「な、なによ。あたしだって脱げば凄いんだから!!」


 葵は大胆に羽織っているパーカーを脱いだ。


 青色のワンピース水着で体にピッチリと密着しており競技用っぽさがある。しかし腰のあたりにはフリルのような短いスカートとなっている珍しいタイプだ。


 そのデザインはいかにもスポーティで活発な葵にマッチしてるようであった。それだけに腰のフリルはちょっと余計な気がしたが美紀曰くダイビングスーツをイメージした水着らしい。


 自警団でしっかり絞られた体のラインには無駄な肉はない。そこはさすがに自慢するだけはあった。ただ残念なことに絞られたくないところまで絞られてしまった彼女のコンプレックスの源はさらに残念なことに……


「ああ、似合っていて可愛いよ」


「そ、そうだな引き締まってて綺羅だ」


 男子はたどたどしく答えると、もうこれ以上彼女を追い詰めては良くないと遠くを見るような目を向けられた。


「うう、なんだか哀れみの視線を感じる……」


 そんな男子の気遣いを感じた葵は落ち込んだ。

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