第194話 教団施設強襲2

 街外れにある教会のような洋館が第二目標である。周りには三階建てや四階建ての集合住宅や倉庫が引き締めあっている場所にポツリと建てられていた。


 副分団長ダリル・フルト率いる第2分隊が洋館を囲む。そのメンバーの中に颯太の姿があった。彼はシン班長の小隊以下3名のチームに配属されている。


「突撃準備完了です」


「よし、突撃!」


 ここの目標は複数の建物からなっているので第1目標より大きい。ゆえに動員している人数も多い。第1目標同様敷地は放置された生垣で囲まれており、地上からでは扉の無くなった門以外からは中が見えない。


 団員達はすばやくその門をくぐると三方に別れて煉瓦作りの建物を包囲にかかる。突入した敷地の左右は荒れた庭があり、所々雑草が生え放題で隅の奥ほどよく生え荒れていた。


 すぐ目の前に教会のような建物の入り口がある。入り口の左右を団員が確保し、いつでも突入できるよう構えた。


 左舷を確保する部隊が敷地の左の庭側に回る。


 入り口から中央の教会まで伸びた建物は窓をすべてブロックで埋め尽くされていて窓が無くなっていた。その先を進んで中央の教会の外壁があるがここの窓も塞がれている。


 中央の教会から横に延びている建物は一見倉庫のようで元々窓はない。代わりに屋根下あたりに換気程度の穴が空いていた。


 その建物を迂回して裏に回る。だが教会の裏側はすぐに生垣となっており、窓や入り口らしきものは一切なかった。


 右舷確保の部隊が右の庭側に回る。


 左舷と異なり、中央教会から右に伸びた建物、そしてそこから手前に大きな建物と連なっている。手前の建物は倉庫らしく荷物を出し入れする大きな両開き扉がある。


 窓はすべて煉瓦で埋められており、奥の建物も同様で裏に回ると左舷と同様生垣にあたる。教会と生垣の間をのぞくと左舷の部隊が見えて右舷の部隊に手を振っていた。


 事前調査通り侵入できるのは正面の入口と右舷の倉庫のみだ。


「建物の包囲を完了しました!」


 包囲完了の報告があがった。


「よし、突撃せよ!」とダリルが突撃の合図を送る。


 中央の扉を大きく開いて部隊がなだれ込んでゆく。


 だが右舷の倉庫の扉はびくともしない。仕方なく破城槌を使用することを決意する。大きな音を立ててしまうが、その点はあらかじめ想定の範囲内である。


 槌を打ち立てると想定外のことが起こった。


 まるで大岩を叩いたかのようにびくともしないのである。裏で戸締まりしてあったとしても普通はたるむはずである。


 しかし、まったく微動だにしなかったのである。各々に『当たり』の言葉が脳裏によぎった。


 中央から突入したダリルの率いる部隊はすんなりと侵入を果たしていた。颯太もダガーを構えて突入してく部隊について行く。


 突入した部屋は縦に長細く、左右に長椅子が奥へと連なってる。中央は通路となっており、結婚式のバージンロードを連想させる。


 教会なのだからそれは当然かのように感じた颯太だが椅子と通路の先は大きなスライド扉で祭壇が見当たらなかった。


『なんだ、あの扉? なんかスゲー嫌な予感がするぜ……』


 颯太は本能で危険を感じた。それは他の団員も同様である。しかし中に入らないことには事件の解決にはならない。


 扉のチェックを行った団員がオーケーのサインを返した。


「よし、開けろ」


 ダリル指示を受けると数人がかりで重そうに扉をあけた。空いた扉の隙間から淀んだ空気が流れてくる。極度の緊張感が漂うと団員達は息苦しさを感じた。


「何だ? この匂い」


 その場の誰もが気がついたことを誰かが口にした。淀んだ空気と共にお香を焚いたような香りが漂ってくる。


 だがそれの印象は『良い香』とは真逆で気分が悪くなりそうな臭いに思わず口と鼻を手でおおってしまう。とりわけ毒ではなさそうではあるが本能が嗅ぎたくないと拒否反応をしめした。


 本殿に繋ぐ大きな扉を半分だけ開ける。外の形状から中は広く円形状となっているはずだが、窓はすべて埋められているため真っ暗である。


 夜目を効かせていなければ漆黒の闇であるがそれでも奥まで見回すことはできない。


 至るところに長い蝋燭ろうそく立てが乱雑に立ち並んでいる。だが蝋燭ろうそくは使い終わったものばかりだ。


 その時だ部屋の一番奥の祭壇で何かが動いた。目を凝らすと祭壇はぼんやりとまるで蛍光のように怪しく光っている。そして人らしき影が祭壇の上で横たわっていて微かに動いている。


「副隊長! もしかして要救助者では?」


「よし、シン小隊はここで扉の確保、他は前進だ!」


「了解!」


 ダリルの指示でシン以下、颯太は扉を確保する配置となった。他の団員は部屋の中へと突撃する。


 円陣を組むような陣形で360度周囲を警戒しつつ祭壇へ近づく。慎重にそれでいて迅速に。


 魔法で夜目を効かせているとはいえその視界は広くはない。魔法をかけたときのマナ量にもよるがおよそ10メートルで最大でも15メートルほどである。


 颯太は中の様子が気になるのか扉の前で彼らを伺っていた。

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