夜の闇を葬る。
山全体をぐるりと囲うように引かれた油に、咲耶の号令で一斉に
土を這うように燃えていた炎が、乾いた木々に燃え移り
不気味な黒煙に覆われた空に、
誰かが言う。「もっと早くこうするべきだった」と。
誰かが言う。「
山焼きを眺める全ての人々の目に、緋色の炎が灯っていた。しかしその色は、緋奈の
炎に蹂躙される山を囲んだまま、
一人残らず殺してやりたいと願う彼女は、
思い詰めたその腕が、ふいに誰かに掴まれる。女と
「離して、夜白」
「離すわけがないでしょう。緋奈さまがお怪我をされたらどうするのです」
夜白の力は思いのほか強く、緋奈が全力で腕を振りかぶろうとしても、びくとも動かなかった。苛立ちを込めて彼を見やれば、困ったように微笑んでいる。それは緋奈の傷の手当てをした時と、全く同じ表情であった。
「緋奈さま、どうか心を落ち着けてください」
「馬鹿なことを言わないで! そんなこと出来るわけが!」
半狂乱の緋奈の両目に、夜白は白い布地を巻き付けた。いつか彼女の傷口を
夜白が問う。
この世のものとは思えないほど澄んだ声で。
「よく見てご覧なさい。この山は今、本当に燃えていますか?」
そしてはらりと
緋奈の視界には、人々が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。