第9話 オンライン百科事典:レプリケーター

レプリケーター (replicators) は主に天上世界で用いられる魔術装置である。


目次

1.概要

2.作成できないもの

3.歴史

4.種類


◆概要

レプリケーターは、原子を材料として任意の物質を作り出す装置である。大雑把に言えば、原子規模の超精密3Dプリンターのような原理で稼働する。

事前に用意したデータを元に作成するため、このデータを操作することで縮尺の変更や、別の要素を組み入れた改造なども行うことができる。


こうした一般向けのレプリケーターは、安全性の面から危険な毒物や爆発物、あるいは武器などの製造がはじめからできないように設定されている。

逆に軍事用、あるいは皇族用のレプリケーターは段階的なリミッター(主に五段階)が設定されており、階級や非常時などに応じてより多くのものを作成できるようにもなっている。


この一方で、不要になったものを分解するためにも使われる。分解は原子まで進められ、レプリケーター内部に貯蓄されて次の作成の材料になる。


作成元のデータは、専用のマテリアルスキャナーによって作成される。昨今はこのシステムがアプリとしてライフデバイスに組み込めるようになり、人々は以前にも増してレプリケーターの恩恵に与れるようになった。

作成には先述の通り原子が用いられるが、大体の場合、必要な原子を貯蓄分で賄えることはほとんどない。このため、実際にはマナリウムから変換した対応原子が用いられる。

こうした仕組みは錬成魔術が元になっており、レプリケーターは錬成魔術の完成形とも言われる。


このレプリケーターの普及により、天上世界は物質的な貨幣経済から脱却した。

金のような貴金属はもちろん、レアメタルのような戦略資源に至るまで、錬成魔術師でなくとも自動で、材料がある限りは誰でも無限に作れるようになったため、物質に依る価値基準にほぼ差がなくなったためである。

現在の天上世界では、当装置の無節操な使用による物資の氾濫と、それに伴う地上世界への影響を加味して。また、フィエンやドワーフなどのマナリウムを扱えない種族に配慮して、一日に可能な使用量に一律の上限を設けて使用を制限をしている。

使用量は全国民一律であり、上限は労働や奉仕活動などに応じて引き上げられるため、このレプリケーター使用権(通称RP。当項目でも以降これを用いる)はそのまま貨幣の代わりとして機能している。


現状、ものの価値はレプリケーターが稼働する際により多くRPを消費するもの=組成や構造が複雑で作成が困難であるものに重きが置かれている。

しかし当然ながら貨幣経済時とはまったく異なる価値観になっているため、地上世界との経済活動に際しては専門家が不可欠である。


◆作成できないもの

基本的にすべてのものを作成することができる。

ただし、マナリウムの作成は現状の技術では不可能であり、また生体(有機体という意味ではなく、生命活動をしている物)も作成できない。

また、装置の大きさを超えるものも基本的には作成不可能となる。

この他先述の通り、毒物や爆発物など、あらかじめ作成不可能に設定されたものもある。


◆歴史

紀元前1万3227年 天上ロウ教国でレプリケーター理論が発表される。

紀元前1万3199年 ヒノカミ皇国、天上ロウ教国よりレプリケーター理論を奪取する。

紀元前1万3081年 ヒノカミ皇国で最初期型レプリケーターが発表される。

紀元前1万3055年 天上ロウ教国で最初期型レプリケーターが発表される。


(略)


新暦927年 大エルフ学芸国で現代型レプリケーターが発表される。

新暦988年 大エルフ学芸国が貨幣制度の廃止を決定。

新暦1089年 ヒノカミ皇国でが貨幣制度の廃止を決定。


新暦1600年 日本皇国にレプリケーター理論とレプリケーター原器が提供予定。


◆種類

主なレプリケーターを列挙する。


・フードディスペンサー

食料品専用のレプリケーター。現代型レプリケーター以降、生鮮食品の作成も可能となった。

ただし、種子は生体に該当するため作成不可能。

このため種子を植物をスキャンしたとしても、作成段階で該当部分は削除される。


・インダストリカルディスペンサー

工業用のレプリケーター。大型のものが多く、金属などの材料はもちろん完成品の作成も可能。

ただし、現代型レプリケーターであっても、機械の完成品を作るよりパーツごとに作成してから組み上げたほうがRPの使用量が少ないため、完成品の作成は滅多に行われない。


・サポートレプリケーター

ライフデバイスに組み込まれているレプリケートアプリ。厳密にはレプリケーターではない。

商店で使用されているレプリケーターの動作を補助するのがメインで、作成速度を向上させることができる。

この他、作成元データのスキャン機能や、作成にかかるRP量を推定する機能なども有する。


・ミリタリーレプリケーター

軍事用のレプリケーター。主に兵器に関わるものに特化した機能を持つ。

民間で使われているレプリケーターでは唯一、危険物の作成が可能。

ただし国による厳格な許可制の下に置かれており、違反した場合は様々な罰則が与えられる。


・ディスアセンブラー

分解専用のレプリケーター。より効率的に物質を原子に分解する。

通常のレプリケーターに搭載されている同様の機能と比べると、分解時の損失を20%前後抑えることができる。

その用途の通り、厳密にはレプリケーターではない。

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