第3話 オンライン百科事典:エルフ

・分類学におけるエルフについては「ホモ・サピエンス・ウェネーフィクス」をご覧ください。

・人文・社会科学におけるエルフについては「エルフ(人文)」をご覧ください。

・法律におけるエルフについては「エルフ(法律)」をご覧ください。


エルフとは、広義にはヒト亜族(Hominina)に属する動物の総称であり、狭義には現生人類の一種(学名 Homo Sapiens Veneficus)を指す。

本稿では、エルフの生物学的側面について述べる。

なお、化石人類を含めた広義の人間については「ヒト亜族」を。その他の現生人類については「フィエン」、「ドワーフ」をそれぞれ参照のこと。

また、エルフの進化については「人類の進化」および「古人類学」の当該項目を参照のこと。

エルフとは各言語でいわゆる「人間」の一種を指す単語であり、学名そのものではないが、本稿ではすべてエルフという呼称で統一する。


目次

1.概説

2.特徴

3.生活史

4.生殖

5.他のヒト種との関わり

6.始祖の謎


◆概説

学名はホモ・サピエンス・ウェネーフィクスであり、その意味はラテン語で「知恵ある魔法使い」という意味である。

論文などの学術的な場においてはウェネーフィクスと呼称されるが、基本的にどの言語においても彼らはエルフと呼称されることが一般的である。


ただし、時代によってアルブス、アールヴなどと呼ばれていたことが明らかになっている。複数の音韻を変遷して、最終的にエルフという呼称になったというのが定説である。

他のヒト種と同じく、身体的特徴のほとんどは直立二足歩行を行うことへの適応の結果生じた形質である。

これにより、やはり他のヒト種と同じく大脳の発達をもたらし、極めて高い知能を得た。道具の製作・使用なども同様であり、また言語などについても同様である。


世界中に分布しており、現在では世界で三番目に広く分布する生物種となっている。

また現生人類では唯一、自前で魔術を扱うことができる。


エルフの知能や学習能力は極めて高く、愚者の少ない種族と言われる。

しかしその学習能力の高さに反して、創意工夫や行動、習性、習慣などの多様性においては他の二種に劣り、一般的に「改良も開発も苦手」、「超保守的」、「気が長すぎる」などと揶揄されることが多い。


◆特徴

他の哺乳類や現生人類との区別を成立させている重要な特徴についてのみ述べる。


・顔

エルフたちはみな一様に美形とされる顔立ちをしている。

しかしその分外見上の多様性が低いとも言える。


・耳

俗に「エルフ耳」と呼ばれる彼らの耳は尖っており、こうした特徴を持つ現生人類はエルフただ一種のみである。


・体色

白エルフは白、黒エルフは褐色と決まっており、例外はない。

また、頭髪は白エルフが金、黒エルフが黒であり、目は白エルフが青、黒エルフが赤である。これらも例外はない。

両者の違いは、フィエンやドワーフにおける黒人白人といった程度の差である。しかし彼らのように、交配によってそうした特徴が混ざることはなく、白エルフと黒エルフの遺伝子がより強いほうが発現する。

このため、白エルフの両親から黒エルフの子が生まれることも、その逆も珍しくない。


・体毛

エルフはときに「裸のサル」と言われる。実際には無毛であるわけではなく、頭髪や眉毛、まつ毛など、最低限の体毛は有している。

しかしそれ以外の体毛のほとんどは退化して存在せず、特に髭や陰毛の類は一切見られない。

このような進化が起きた原因については様々な説があるが、定説はない。


・性的二形

エルフはオスとメスでその姿かたちに大きな差異がある。

オスはメスよりかなり大きく、平均身長が約193センチメートル、平均体重が約128キログラムと、筋骨隆々とした巨漢となる。

オスのエルフの消化器官は極めて効率的に筋肉の生成、維持に必要なエネルギーを獲得する機能を持っており、同じ体格のフィエンやドワーフと比較しても、強烈な力を発揮することができる。

一方メスのエルフは平均身長が136センチメートル、平均体重が33キログラムと、極めて小さい身体にしかならない。

オスのエルフのような機能はなく、基本的にはフィエンやドワーフの子供と同程度の身体能力しか持たない。

このような差異が生じることになった原因については様々な説があるが、定説はない。


・魔術

 詳細は「魔術」および「マギア因子」を参照


何よりもエルフをエルフ足らしめる要素として、魔術の存在がある。

エルフは現生人類で唯一、自前で魔術を扱うことができる種族であり、エルフという種の短所を補って余りある力を発揮する源泉と言える。

エルフは体内にマギア因子と呼ばれる特殊な細胞器官を持っており、この細胞器官に脳から神経伝達物質などを介して指令が送られることで魔術は発現する。

ただし魔術はいずれも物理法則に従うため、正しく、あるいは強力に発動させるためには、魔術の腕だけでなく科学知識が必要不可欠となる。


・寿命

現生人類のみならず、他の地球上の生物と比較しても突出した長い寿命を持つ。

現在の最年長記録は414歳で、平均寿命も310歳前後である。

また、基本的にどのような病気にもならないという特徴を持ち、怪我なども多くは一時間以内に完治する。

詳細は生活史で後述。


◆生活史

他の多くの哺乳類と同じく、有性生殖で胎生である。妊娠期間は約191日、約1~2キログラム前後で生まれる。

新生児はサル目としては突出して無力な状態である。フィエンやドワーフと比べてもその脆弱さは圧倒的だが、エルフ特有の超健康は新生児(というより胎児)の状態から既に保有しているため、病気やけがによって死亡する新生児はほぼいない。

約1年で這い、立ち歩き、言語が操れるほどになる。栄養の程度にもよるが、8年から12年までの間に性的に成熟を完了する。身体の成長はその前後に完成する。


ただし、個体によっては4歳で成長、性的成熟を完了したり、100歳を越えても未了だったりと、個体差が極めて大きい。

これは近年の研究で、マギア因子が当人の潜在意識を読み取って身体の成長を左右している、という結果が発表されており、実際早熟だったものは「早く大人になりたかった」、晩成だったものは「大人になんてなりたくなかった」と語ることがほとんどだという。

老化は極めて遅いものの、一様に300歳から老化が加速する。詳しくは寿命の項目で後述。


・多産および妊娠の条件

エルフは自らの意思によって、妊娠するかどうかを決定することができる。

オスとメスが双方同意した上での性行為がなされた場合にのみ、妊娠する。

そうした合意が連続した場合は、サル目の中で最も多産となる。


このような特殊な妊娠形態は、成長や寿命と同じくマギア因子が関わっている。

ただし、理論上は他の現生人類と同じく双子や三つ子を生むことができるが、母体の小ささから、双子以上の妊娠は確実に母体の命に関わる。

切開分娩など、医療技術が発達して以降は多産によって死亡する個体は減少したものの、現代においてもメスのエルフの死亡率第一位は双子以上の妊娠による出産となっている。


これらの理由のほか、超寿命のおかげで食糧不足との戦いが常に付きまとっていたエルフたちの国では、古今東西を問わず多くが一定年齢以上になるまでの妊娠を禁じたり、妊娠回数を制限する人口抑制策を採っている。


・寿命

 「エルフ因子」も参照


先述の通り、現在の最年長記録は414歳で、平均寿命も310歳前後である。

理想的な環境での最大寿命はおよそ420歳程度と想像されるが、本人の意思や環境によって寿命は大きく変わる。

しかし本来のエルフの最大寿命は、他の現生人類と同じく120歳前後とされている。

にもかかわらずエルフが超寿命を発揮する最大の理由は、エルフの体内に存在する細胞器官、エルフ因子である。


エルフ因子は身体のあらゆるところに存在し、わずかでも体内に問題があった場合、それを即座に治療する機能を持つ。

これは病気のみならず怪我などにも発揮されるため、エルフは怪我も病気もない長い人生を歩むことができる。

またこの機能は卵子や精子の段階でも発揮されるため、エルフには先天的な病気や障碍も存在しない。


このエルフ因子が魔術を生み出すマギア因子と絡み合うことで、エルフの寿命は3倍以上に伸びる。

しかしエルフ因子は生後300年で機能停止する。このため、エルフは300歳以上になると病気や怪我から逃れられなくなる。また、マギア因子との連携が途切れることで老化が加速する(正確には種族本来のものに戻る)。

多くのエルフはこうした身体環境の激変に耐え切れず精神を病み、自殺する。このため、エルフの平均寿命は310歳前後に留まっている。


先述の最年長記録者は、まさにその300歳になるそのときまで子供の身体を保っていた。彼女はエルフ因子が機能停止した300歳の段階からようやく肉体的な成長が始まり、フィエンとほぼ同様の成長と老化を経て414歳で死亡した(詳細は「オガワ・サユ」を参照)


なお、300歳を超えて長生きしたエルフは、例外なく魔術が下手であり、エルフの間には「魔術師長生きせず」という諺まで存在する。

これは魔術を起こすマギア因子に能力の限界があり、一定以上の質で魔術を起こせるようになった人物は、寿命を延ばす方面にマギア因子を働かせられなくなるからと言われている。


◆生殖

他のヒト種と同じく、エルフの性的活動は非常に活発である。ほとんど年間を通じて性交が行われ、他の動物と異なり出産期も定まっていない。

オスはメスが性成熟後に放出する性フェロモンに対してのみ、性的魅力を喚起される。

しかしそうした感覚には個体差があり、鈍いオスは子供や同性、他のヒト種と交わることもある。

逆にメスにはそうしたフェロモンなどの受容はないため、メスはオスに比べると他のヒト種と交わることに積極的になりやすいと言われている。

なお、同じ理由でエルフにおいてはオスの同性愛は極めて少ないが、メスの同性愛はさほど珍しいものではない。


・他のヒト種との交雑

 詳細は「半エルフ」を参照。


通常では滅多に起こることではないが、エルフと他のヒト種との交雑が行われることは稀ながらある。

受精確率は同種同士よりも格段に下がるが、雑種(半エルフと呼ばれる)が生まれる可能性は決してゼロではない。

その確率は、おおむねライガーのような他の哺乳類の雑種と同程度であるため、エルフと他のヒト種は「遺伝子がライオンとトラくらい違う」と言われることもある。

半エルフは他の哺乳類の多くの雑種と同じくまったく繁殖力を持たないが、メスには稀に繁殖力を持つ個体が発生することもある。

しかしさらに生まれた子はオスメスともに生殖機能がないため、以後の繁殖はできない。


◆他のヒト種との関わり

エルフはおよそ7万年前から他の種族と共に暮らし、その生活域を広げていった。

その当時から現代に至るまで、基本的にエルフは支配者側として存在している。

特に古典末期~暗黒前期にマギア因子の移植技術が確立されるまで魔術はエルフの独占能力であり、これによって多大な武力を有していたエルフは世界の支配者だった。


しかしエルフにとっての支配は強制的なものではなく、あくまで保護に近いものだった。

愚者の少ない種族と言われるエルフは、他のヒト種を悪しざまに扱うものは極めて少なく、差別的な思想も長らく持っていなかったためである。

このため初期のフィエンとドワーフは、エルフの庇護下で発展していったと言っても過言ではない。


ドワーフに至っては、エルフの庇護下でフィエンとプラエドワーフが交配を重ねたことで誕生した種族であり、エルフがいなかったらプラエドワーフは何らかの形で絶滅していただろうと言われている。

エルフは彼らを庇護する代わりに、自らが苦手とする新技術の開発などを担わせてきたのである。

その関係性は現代でも基本的に変わっていない。エルフの歴史において、重要な技術の多くはフィエンやドワーフが関わっているか彼らの手による発明である。


しかし、地上世界ではエルフとフィエンが長きに渡って深刻な対立関係にあった。この関係性は地上世界の種族関係として現代まで残っており、天上世界と地上世界の種族間関係は一定の差が存在している。

技術の進歩により世界の連結が進んだ現在では多少なりとも和解は進んでいるものの、やはり地上世界におけるエルフ系国家とフィエン系国家の争いは、規模の大小を問わなければ絶えない。

それは現代における世界の緊張の最大要因であり、第二次人種間戦争は秒読み段階であるとも言われている。


◆始祖の謎

 「預言者ギーロ」も参照


エルフはおよそ7万年前から文字を使い始め、種としての長い歴史の大半を記録として残している。

しかしだからこそ、エルフという種の歴史は明らかに異常とも言われている。

その異常の原点が、いわゆる始祖と呼ばれる存在である。


始祖はおよそ7万年前に実在した人物で、彼やその子孫が残した記録によれば「ヒノカミ・ギーロ」という名前であったとされる。

様々な測定で、間違いなく当時の記録であると認定されたギーロらの記録が正しいのであれば、エルフは彼の時代に突如として大量の技術を獲得し、どこからともなく文字を使い始めたことになる。

そしてそのすべては、ギーロという人物一人によってもたらされたことになる。これはどう見ても異常事態であり、エルフ史はおろか人類史、果ては地球史においても最大の謎の一つとされている。


現在では、彼によって始まったエルフ神聖文字、および神語の形態が現代の日本語とほぼ同じであることから、「始祖の正体は未来の日本から過去に飛ばされた時空遡行者である」とする説が有力である。

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