お出掛け

「さあ今日は何処に行くか?」


「私べつに出掛ける気は無いんだけど・・・」


「俺はサクラと出掛けたいんだ」


「・・・・はぁ~じゃあちょっと買いたい物があるからそこでも良い?」


「ああ良いぞ。何を買うんだ?俺が買ってやる」


「いや、それは結構!自分で買うよ!!」


「遠慮するな」


「遠慮じゃ無いから・・・ただお花を買いに行きたいだけだよ」


「花?」


「うん。店内に飾る花をそろそろ変えようかと思ってアイラの店に行きたいの」


「アイラと言うと・・確かシルバの恋人だったか?」


「そう。そのアイラのお店だよ」


「そうか、では行くぞ」




カイルはそう言うと自然に私の手を握って歩きだしたのだ。




「あ、あの・・・手を・・・」


「嫌か?」


「い、嫌って訳じゃ無いけど・・・」


「なら良いだろう。行くぞ」




握られた手から私の心臓の音が伝わってしまうかと心配になるほど激しく鳴っていたのである。




・・・私、一体どうしたんだろう?




自分でもよく分からないこの動悸に戸惑いながらも、私はカイルと共にアイラの店がある場所まで一緒に並んで歩いていったのだった。














「あ、アイラ!」


「あら、サクラ様!それに・・・カイル王子までご一緒ですのね」




アイラの姿を見付けた私は笑顔で手を振ってアイラの名を呼ぶと、アイラは私を見て嬉しそうにしそして私の隣にいるカイルを見て微笑んできたのである。




「ま、まあ成り行きで・・・」


「成り行きとは何だ」


「成り行きじゃん!」


「ふふ、仲が宜しいですね」


「いやいやアイラ、何処をどう見たら仲が良いように見えるの?」


「だって・・・」




そう言ってアイラはちらりと私とカイルが繋いでいる手を見てきたのだ。




「っ!こ、これはカイルが勝手に!!」


「嫌じゃ無いんだろう?」


「うっ!!」




ニヤリと笑ったカイルは繋いだ手を敢えて見せ付けるように持ち上げ、あろうことか指と指を絡めた恋人繋ぎに組み変えた。




「なっ!カイル!!」


「この方がもっとしっかり握れるからな」




私はそんなカイルの様子にガックリと肩を落としもう何も言うまいと諦めたのだ。




「ふふ、本当に仲が良いですね」


「もうそれ良いよ。それよりもアイラ・・・今日はお花は売ってないの?」




そう言ってアイラの店を見てみるが一本もお花が無かったのである。


そしてどう見てもアイラは片付けをしているように見えた。




「あ、もしかしてサクラ様、お花を買いに来てくださったのですか?それならごめんなさい。たまたま今日は大口のお客様がいらっしゃって全部売り切れてしまったんです」


「そうなんだ・・・まあ残念だけど今日は諦めるね」


「ごめんなさい・・・あ!そうだ!もし良かったらこの後お時間ありますか?」


「え?特に用事は無いけど?」


「もうすぐシルバ様が来てくださるのですが、もし良ければ私達とご一緒に私の作った花畑に行きませんか?」


「アイラの花畑に?」


「はい!今日は午後から非番だからとシルバ様が私の花畑の収穫を手伝ってくださると言ってくださっていたので、サクラ様とカイル王子もご一緒にどうかと思ったのです」


「あ、でも二人の邪魔じゃ・・・」


「いいえ!お気になさらないでください!!きっとシルバ様も良いと言ってくださります!」




すると丁度そのタイミングで私服姿のシルバやって来たのである。




「アイラお待たせ!」


「シルバ様!」


「・・・って、カイル王子にサクラ様!?」


「そう言えばお前が今日は午後から用事があると言って機嫌が良かったのはこの為か」


「うっ・・・アイラこれはどういう事なんだい?」


「実は・・・」




そうしてアイラに事情を聞いたシルバは苦笑いを浮かべながら私達の同行を受け入れてくれたのだ。




「アイラの荷馬車ではさすがに四人は乗れないので、一頭馬を借りてきます」




シルバはそう言うと何処かに走っていきすぐに大きな茶色の馬を連れて戻ってきた。




「ではカイル王子、サクラ様の事をお願い致します。私はアイラと共に荷馬車で先導致しますので」


「ああ分かった」




馬の手綱をシルバから受け取ったカイルは私に向かって手を差し出してきたのだ。




「サクラ」


「・・・私、馬に乗るの初めてなんだよね」


「そうなのか?」


「うん」


「まあ初めは怖いかもしれんが、俺が付いているから大丈夫だ」




私はおずおずとカイルの手を取ると、カイルは私を引き寄せそして私の腰を持って馬の背中に横座りで乗せてくれたのである。




「た、高い!!」




予想していたよりも目線が高くさすがに怖くなってしまった。


しかし私の後ろに華麗に乗ってきたカイルがすぐに私を抱き留め、落ちないように腰をしっかり支えてくれたのである。


私はそのカイルの体温を体に感じ段々と怖さが薄れていったのだ。




「サクラ動くぞ。ああそれと、俺に掴まっていないと落ちるかもしれんからな」


「え!?」




そのカイルの言葉に私は慌ててカイルの体に手を回し落ちないように必死に掴まった。




「くく、いつもそれぐらい素直なら良いんだがな」


「素直って!」


「さあ少し遅れているからな。ちょっと飛ばすぞ」


「え?あ、ちょっと待っ・・・きゃぁ!!」




カイルが片手で手綱を持ち馬の腹を蹴ると一気に馬が走り出したのだ。


さすがの私も今まで経験した事のない乗馬体験にもうカイルに必死に掴まるしか出来なかったのである。


そうして街中を抜け外に出ても暫く走り漸く目的地に到着したのであった。

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