二日酔い
暖かな日の光が顔に当たる感触に、私は重い瞼をゆっくり開けた。ボーとする意識の中見たことの無い高い天井を見つめている。
・・・ここ何処だろう?
私はゆっくりとベットから上半身を起き上がらせたが、突如激しい頭痛に見舞われ頭を押さえた。
「っ・・・!」
痛みが引くまで暫く頭を押え、まだ少しズキズキするがだいぶ治まってきたので周りを確認する事に。
私はキングベットくらいの大きさの豪華なベットに寝かされていた。服も肌触りの良い上質なネグリジェ。部屋の床は全て絨毯が敷かれ置いてある調度品も高級そうで、間違ってもここが宿屋の自室では無いことがハッキリと分かる。
ここが何処なのか理解出来ないでいると、ベットのサイドテーブルに自分のノートが置いてある事に気が付きそれを手に取ってホッと安心した。
そしてもう一度意識が無くなる前の事を思い出そうとする。
・・・確か・・・舞踏会でカイルと踊っていて、段々楽しくなっていったんだ。そう言えば、カイルは私が酔っていたと・・・でも、飲んだのはシャンパンをグラス一杯飲んだだけだし、あれぐらいならいつも酔ったこと無かったんだけど・・・。
私が何故そんなに酔ってしまったか、う~んう~ん唸って考えているとある結論が頭に浮かんだ。
そうか!あの時何も食べずにシャンパンだけ飲んで、その後すぐに踊ったから酔いが急激に回ったんだ!・・・だから今二日酔いでこんなに頭痛がするのか。
理由が分かると今度は急激に恥ずかしくなった。酔っぱらった挙げ句カイルにあんな言葉使いをした自分に、穴があったら入りたいぐらいに恥ずかしいと思ったのだ。
ベットの上で一人落ち込んでいると、扉が控えめにノックされそこから一人の侍女が部屋に入ってきた。手にはトレーを持っていてその上には水の入ったコップと白い袋が乗っている。
「まあ、サクラ様起きられていたのですね」
「あ、おはようございます」
「おはようございます。体調は如何でしょうか?」
「え~と、だいぶ治まってきましたけどまだ頭痛がします」
「では、こちらのお薬をお飲み下さい。医師から処方された物で二日酔いに良く効くそうです」
「・・・あ、ありがとうございます・・・」
優しく微笑まれながらサイドテーブルにトレーを置き、コップと袋から出した薬を手渡してくれる。
私は有り難く受け取りその薬を水と共に飲んだ。
・・・侍女さんにまで酔っ払った事がバレているのか・・・マジ泣きたい。
「そう言えばここは何処なんですか?」
「こちらはお城の中の客室です」
「・・・やっぱりお城の中なんだ」
「昨夜カイル様が意識の無いサクラ様を、焦られた様子で抱き抱えたままこの客室までお連れしたのです」
「抱き抱え!?」
「はい。こういう風に」
侍女がその時のカイルの様子を頬を染めながらやってくれたのだが・・・。
お、お姫様抱っこじゃないか!?・・・確かに意識を失いかけた時体が浮く感覚はしてたけど、まさかカイルにお姫様抱っこされているとは思わなかった。
「実は今城中でこの話題が持ちきりになっているのですよ」
「え?」
「舞踏会でカイル様とサクラ様が頬笑み合いながら素晴らしいダンスを踊られ、そして突如倒れられたサクラ様を心配した表情で抱き上げ素早く舞踏会場を後にしたカイル様の姿・・・お二人は恋仲なのだと言われていますわ」
「こ、恋仲!?」
彼女は両手を胸の前で合わせ、うっとりとした表情でどこかに意識を飛ばしている。
侍女さ~ん!帰ってきて~!!
そもそも色々おかしいから!カイルと頬笑み合ったのでは無く、私が酔っ払って楽しくなって笑ってただけだし、素晴らしいダンスはカイルがリードするのが上手かっただけで私は殆ど踊れて無いです!それに一番間違っていることは・・・。
「私達恋仲じゃ無いですから!!」
「まあ、サクラ様照れていらっしゃるのですね」
「違う!!」
私の発言に意識を戻してくれたのだけど、まったく信じて貰えず微笑まれながら拒否の言葉を聞き流し、私の身支度を手伝ってくれた。
何でこんなに事に・・・。
結局あれから何度説明してもミランダさん(私のお世話をしてくれている侍女の名前)には信じて貰えず、逆に照れているのだとどんどん勘違いされていったのだ。
「どうぞ食後のお茶です」
「ありがとうございます」
私は部屋のテーブルに用意された朝食を食べ、今は食後の紅茶を頂いている。正直城のご飯は美味い!さすが王族に出す料理を作る人だけあってどれも盛り付けが綺麗で、味も上品ながら繊細な味付けで美味しかったのだ。だけど私は女将さんの作る家庭的な味付けの料理も好きである。
・・・そう言えば、女将さんに何も言えずにお城で一泊しちゃったけど、きっと心配させているんだろうな・・・。
そう思いそろそろ帰らせて貰おうかとミランダさんを見た時、突然扉が大きく開きそこからズカズカとカイルが入ってきたのだ。
「カ、カイル!?」
「おお、サクラもうだいぶ体調良さそうだな」
「いやいや、とりあえず入る時はノックしようよ!特に女性がいる部屋には!」
「気にするな」
「気にするから!!」
「ふっ、それだけ元気ならもう大丈夫だな」
嬉しそうに見てくるカイルの表情に本当に心配してくれていたんだと思い、さらにここまで運んでくれた事を思い出した。・・・もう運ばれ方は気にしないようにしよう。
「あの~カイルありがとね。ここまで運んでくれて」
「ああ・・・重かったがな」
「なっ!」
そう言ってニヤリとした表情で私を見てきた。
「思っていても女性に重いとか言うな!!」
「くく・・・まあ、重かったのは冗談だがな」
「・・・っ!言って良い冗談と悪い冗談があるでしょうが!・・・はぁ~まあ良いや、私そろそろ宿屋に帰ろうと思ってるんだけど」
「何故だ?」
「何故って、女将さんはまさか一泊してくると思っていなかっただろうしきっと心配してると思うからさ」
「ああ、その事なら問題は無い。昨夜の内に使いをやって城で泊まらせる事は伝えてある。ついでに今日一日休みの許可も取ってあるから心配しなくても良いぞ」
「えっ!?」
まさかそんな手回しをされてるとは思わなかったので驚きの表情でカイルを見る。カイルはそんな私を楽しそうに見ておりそして徐に私の手を掴んで椅子から立ち上がらせた。
「今日は城の中を案内してやる」
「え~!!まだ暇潰し続行なの!?」
「当たり前だ。約束しただろう?」
「うっ!」
もう何言っても変わらない事は経験済みなので、諦めながらカイルについて行く事に。扉から出ていく時チラリとミランダさんを見ると、微笑ましいと言う表情で見てきていたのでガクリと項垂れたのだった。
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