第十二話 風のいたずら、猫納得
やってきたのは王都より三時間かけて移動した東の森。通称『
「なんでそんなとこに依頼があるにゃ?」
「人が多いからこそ人の安全を確保するために依頼が出されるんだよ」
「今回はポイズンボアだったにゃ。どうゆうやつか知ってるにゃ?」
「うん、もちろん。相手を知らないで依頼を受けるほど僕はこの仕事を舐めていないよ。ポイズンボアは成体で体長五メートルほどの大きさで、名前の通り毒性の唾を飛ばす事からそう呼ばれている。皮膚は固く、生半可な攻撃・魔法ではダメージを与えることが難しい。人災クラスの魔物」
「予習バッチリにゃー。人災ってことは人を襲うのかにゃ? 」
「うん、そうだよ。だからなるべく早く討伐してあげないと。それに日帰りで出来る依頼はこれくらいしかなかったからね」
「心遣い感謝感激雨あられにゃ」
「猫君はたまにわからない言葉をつかうね」
「ところで、どうやって見つけるにゃ? 」
「あ、うん。それはね……丁度あった! 」
木の幹から生えている巨大なキノコを手に取った。
「これはポイズンベアの大好物の毒キノコなんだ。人間には害があるんだけど。これを……こうやって……持ち歩くんだ」
そういうとシエルは腰にキノコを逆さにつるしていった。
「なるほどにゃ、好物の匂いでおびき寄せるってことにゃ」
「そう、まあまあの大きさのキノコだから何個か集まってきたら木に吊るして待ち伏せ。この毒キノコの匂いが強い方におびき寄せられるんだ」
「それで、どうやって討伐するつもりにゃ? 」
「もちろん魔法だよ。これでも有名な方の一番弟子なんだ。ずっとソロで銅級って珍しいんだよ? 」
「それは知らなかったにゃ。ん? 物凄い勢いで何か来たにゃ! 」
「うん、確かに木をなぎ倒す音が聞こえるかも。結構速かったね……詠唱に入るから時間稼ぎ頼んだよ」
「任せるにゃ」
サーチを展開しながら歩いているとすぐに分かった。こちらに一直線に来る大きな物体。猪突猛進と日本では言っていたけど、こちらの世界でもボア《いのしし》は同じ性質なのだろうと和仁は思った。
ただ、その速さは日本にいた猪とは比べ物にならないくらい早く大きい。もう目に見える距離まで近づいていた。シエルがあらかじめ詠唱に入った意味が解る。
「やっぱり見ても強さわかんないにゃ。そんな相手には先手必勝。にゃあ“! 」
様子見は魔爪。魔法の斬撃がポイズンボアを襲う。
「……それは雷鳴の如き瞬閃、……うそ! 」
「ああ、なんだか申し訳ないにゃ」
あっという間に表れたポイズンボアはあっという間に和仁の魔爪により真っ二つに切られた。
「討伐完了にゃ」
「猫君、ほんとに君は只者じゃなかったんだね。ポイズンボアを詠唱なしの一撃で倒すなんて」
どうやら有名な方の一番弟子でも詠唱なしでは魔法はだめらしい。恐らくこの世界の魔法理論は無駄が多いのだろう。和仁の持論だが。
「にゃーはこう見えて凄腕の魔法使いにゃ」
調子に乗る和仁。それにビビるシエル。
「も、もしや、猫は仮の姿で実際は人とかですか? 」
「そんなわけないにゃ。にゃーは生まれたときから猫にゃ。こんな言葉遣いを強要される哀れな猫にゃ。それに人型ににゃーはなれないにゃ」
「あ、良かった。それにしてもそのにゃってわざとじゃないんだ」
スフレはクスリと笑う。
「君と一緒に冒険するの魔法の勉強になりそうだし、テレパシーの件は一旦保留に良いかな? こっちから一緒に冒険させてほしいくらいだからさ」
「にゃふふふふん」
最初の男に逃げられた時はどうなるかと思ったけど、なかなかいい子がいたもんだと和仁は感心した。シエルは素直だし、しっかりと物事を見る目がある。
「それはこちらからもお願いするにゃ。たまに一緒に連れていってほしいにゃ。そのかわり気になる魔法は教えるにゃ」
「ありがとう。それじゃ討伐部位をとらなきゃ。ポイズンボアは耳と牙」
「それで討伐証明するにゃ?」
「そう、これがないとね。いやー面白いひとーじゃなくて面白い猫にであったよー」
「お互いにいい出会いだったにゃ」
満足の和仁であった。帰り道何もなければリリーが帰るまでに余裕で間に合うだろう。
「じゃあにゃーはここまでにゃ。ギルドには一人で行くにゃ」
「わかった。ありがとうね猫君」
城門前で別れを告げるべく立ち話をしていた。今後の連絡の取り方や、もう一度口止め、たわいないことだった、しかし、その時一陣の風が吹きシエルの帽子が飛ばされる。
「わっ」
慌てて抑えたが間に合わず、少し離れたところに帽子が落ちる。飛ばされた頭にはふさふさの髪に、ふわふわの猫耳があった。和仁は通りで第一印象猫っぽいと思ったわけだと一人納得していた。
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