第4話
邪神パルタナに勧誘され、この世界に転生してから1ヶ月が過ぎた。
ちなみに俺の現在の服装はダンジョンに溜まった魔素で作られた動きやすいスーツで、堅苦しい見た目に似合わず体の動きを全く阻害しない。
まるで魔法のような服だ。
いや、魔法なんだけども。
そしてそれからというもの、とにかく俺は死なないように自身の強化に専念し、ダンジョンコアからの指導を受けつつも自分に出来る事を増やしていったのだ。
そんなわけで今日も今日とて日課の訓練を終えた俺は、未だ1ミリメートルも拡張していないダンジョンを見渡しながら、ダンジョンコアに話しかけた。
「コア、今日の訓練は終了だ。俺のステータスを表示してくれ」
『了解しました。魔素スキャンからマスターのステータスを計算しアウトプットします』
そしてピコピコとしばらく計算したダンジョンコアはその球体の上に半透明のウィンドウを表示させた。
【ステータス】
固有名:No name
種族:ダンジョンマスター
HP:────
MP:3200
筋力:12
守備:10
敏捷:9
魔法抵抗:1000
スキル:
魔力操作(24)
魔力感知(22)
魔力回復(11)
身体強化(──)
体術(8)
「相変わらずアンバランスな能力だな」
『是。魔力生命体であるマスターの能力は魔力と魔法の方面に特化しており、素の肉体能力は未だ非戦闘員の人間種に比べて大差はありません。しかし────』
「ああ、分かってるよ。魔王にとって肉体能力なんてのはただの飾りだ。魔力生命体は魔力を無制限に身体強化へとつぎ込めるから、MPがあればあるだけ肉体能力は上昇する」
『是』
本来、身体強化に込められる魔力というのはそのスキルレベルに比例した量までしかつぎ込めず、強化できる倍率に制限があるらしい。
例えば身体強化(10)なら肉体の強化倍率は1.1倍で魔力は10までしか消費できないとか、そういった制限だ。
しかしそもそもが魔力で構成されている俺の身体にはその制限がなく、消費した魔力を全て強化に回せるというアドバンテージがある。
故に身体強化のスキルの数値は測定不能となっており、数値化されていないのだ。
いま3200ポイントの魔力を全力で強化に回せば、30倍くらいのステータスで1時間ぐらい動き回れることだろう。
だが魔力生命体には欠点もあり、体が魔力で構成されている以上MPがゼロになると肉体の形を維持できなくなる。
MPゼロになっても安静していれば徐々に回復して死ぬことはないのだが、その状態で攻撃をもらえばたちどころに肉体は崩壊し、消滅することとなるだろう。
よって俺にとってHPとはMPの事であり、同一視されるものだった。
HPの表記に測定値が存在しないのはそのためである。
「確か冒険者や兵士の最低ランクが全能力15以上程度だったかな」
『是。このままのペースで訓練を続け順調に魔素の回収が出来れば、およそ2か月程でそのラインに到達します』
「あと2ヶ月も必要なのかぁ~。安全第一にするためにダンジョンの拡張すらしていないけど、ずいぶんとスローペースな成長だ。まあ、でも拡張さえしなければダンジョンに入口が出来る事もないんだし、焦らず慎重に、だな」
俺がこの1ヶ月ダンジョンを拡張しなかった理由はここにある。
幸いな事に、コアによるとこのダンジョンは山の中に埋まる形で存在しているらしく、飲まず食わずでも魔力さえあれば生命維持ができるダンジョンマスターの特性を生かして引き籠っていたのだが、これ以上少しでも拡張しようとすると地表にダンジョンへの入り口が出来てしまうとのことだった。
故に俺はこのダンジョンが発見されない事をいいことにずっと修行をしていたのだが、それもそろそろ飽きて来た。
だってずっと能力の向上と身体を動かす訓練しかしてないんだもの、気が滅入るよ。
だからそろそろ魔物や武器を生産しつつ、積極的に魔力を回収し、魔素に還元していこうかと思っている次第である。
転生する前に邪神パルタナにも神殿へおいでと言われていたので、どちらにせよいつかは外に出ようかと思っているのだ。
ただ迂闊に出歩いて死にたくはないので、こうして訓練に明け暮れていたわけだけども。
「とはいえ、ずっとこのままでは精神衛生上よくないし、コアからの指導で身体の動かし方もつかめて来たからそろそろ護衛つきで出かけようと思う。コア、現在生産できる武器の一覧、そして魔物の一覧を表示してくれ」
『了解しました。武器と魔物にそれぞれ半分づつ残存魔素を消費する事を前提に計算します』
【装備】
木・銅・鉄・皮までの任意の形状をした特殊な効果の宿らない普通の装備。
生産可能な量は60キログラム前後。
【魔物】
Fランク:
ゴブリン、ビッグビー、パペット、角ウサギ、スライム
3体まで。
Eランク:
ゴースト
1体まで。
やはりダンジョンを拡張していないだけあって、コアが扱える魔素の量が心許ない。
大した護衛や武器は期待できそうにないようだ。
特に魔物は酷い。
このレベルの魔物を3体召喚して如何ほどの戦力になるというのか。
だが全てが使えないという訳でもない。
コアから流れて来た知識によると、ゴーストという魔物は陰に潜み隠形することを得意とするので、主人である俺の影に潜ませておけば人に見つかっても俺が魔王だと認識されずらい。
そしてビッグビーは空を飛ぶ大きな蜂なので、上空からの偵察にもってこいだ。
魔王の特権としてなんとなく意思疎通はできるようなので、ビッグビーは割と斥候として優秀かもしれない。
となると、魔物側はビッグビーとゴーストのどちらかを選びたくなるが、さて……。
「よし、それでは鉄の槍、ゴースト一体を生産してくれ。今日からはダンジョンに穴をあけて外で魔素を稼ぐことにする」
『命令を確認。魔物と武器を生産致します』
そうして一瞬コアが光ったかと思うと、そこにはシンプルな形の鉄槍と、半透明な少年姿の魔物が存在していた。
ダンジョンマスターは絶対に死にたくない たまごかけキャンディー @zeririn
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